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天間荘の三姉妹のYOKのレビュー・感想・評価

天間荘の三姉妹(2022年製作の映画)
2.8
10月はほとんど映画を観ないという、まさかの月間だったので(転職活動と犬の病気とゲームやりすぎなせい)、懸賞で当たった喜びを胸に今作を観に行きました。

皆様お元気ですか?
私はすっかり映画の世界では浦島太郎です。今楽しみな映画はブラックパンサーでワカンダーフォーエバーすることです。無事に転職活動も終わり12月からは新天地ですが、転職エージェントを使わなかったことに対して派遣元の営業に鼻で笑われてムカ着火ファイヤー(死語)です。バイオハザードヴィレッジ/シャドウオブローズめっちゃ楽しい、泣いた。ベネディエント邸のトラウマがまたひとつ増えました。




※以下、ネタバレすごい
※文句多い
※震災に関する記述あり
※個人の意見です







まず、CMと予告を見ても全く内容が理解出来ないまま、あらすじも見ずに行ってしまったので、昔深夜ドラマでやっていた「スカイハイ」のスピンオフだとは夢にも思わなかったので目飛び出た。

とはいえ、スカイハイはドラマも原作も知らずだったせいで、柴咲コウ演じる死神(?)が映画の中盤あたりで唐突に「お逝きなさい」って言い出したところで、待ってこれってギャグ?本気?ってめっちゃ戸惑ってしまった。エンドロールでようやく理解した。なんで映画のタイトルから「スカイハイ」って消した?フライヤーも予告もシーもそんな雰囲気なかったので、なんか騙されたってかなんて言うか…戸惑いが凄かった。

ストーリーも序盤は良かったのよ。あらすじ知らなかったからさ、「ここはあの世とこの世の間の三ッ瀬」とか序盤で言われちゃって、まさかのファンタジー!ってビックリしてワクワクしたもん。この天間荘という宿で一体どんなヒューマンストーリーが!?って。

でも浅いのよ。走馬灯というアイテムを出しておきながら見せる映像はあっさりしたもんでグッと来ないし、臨死状態の人は走馬灯を見て生きるか死ぬかを選択するって設定なのに、のん演じる"たまえ"は使わないので過去の映像なし。故にバックボーンペラっペラ。結果として、たまえの母ちゃんに関しては何も描かれておらず、たまえの苦労続きの過去もセリフだけでしか描かれないので、何が大変だったのかピンと来ない。

長女のぞみ、次女かなえ、に関してはそこまで設定に不満はなく見れた。このふたりの過去もさらっとセリフで語られるだけだけどそんなに気にならずに済んだし、大島優子さんも門脇麦ちゃんも役に合っててよかった。姉妹だけど全く違った性格も良かったし、喧嘩しても翌日には仲直り出来る仲の良さが見ていて微笑ましくもあった。

いちばん個人的に嫌いだったのがこの三姉妹(正確には長女と次女)の母。震災のせいで望まぬ死を迎えてしまった葛藤があるのは分かるけど、それを押し付けるように20歳の若者に対して「私たちはあっという間に死んだ!のに!生きる元気があるお前が自殺するな!親に貰った命だろ!」は、マジでほっとけだったわ。

なんかそこかしこにちょっとご年配の方が好みそうなセリフがあったせいか分からんけど、私はだいぶ反骨精神を抱いてしまった。生きるも死ぬも己の権利なのに、それを他人が「親に悪いと思わんのか!?」って、はあ?って、心が狭いからさ私、ムカついちゃったよね。

じゃあ父親は?っていうと、絶対お前だろってわかりやすい変そうで最初からいるのがなんかもう薄ら寒いし、なんで家族を捨ててよその女性と暮らし子まで作ったかの過程は1ミリも描かれてねえの。それでいて「癌でして」と末っ子をよろしくとお願いしに来た天間一家に会う前に震災で死去、それを伝えられた本妻は「そんなこと言われたら怒れん」って…んー?

勝手した大人の都合で生まれてきたたまえにはガチ切れしといて、好き勝手して何で出ていったかは一言もゲロせん夫は許すって…なんかそれって惚れた弱みってやつ?な謎さあった。

思い起こせばみんなバックグラウンドがあっさり風味なせいで深みないのに、なんかみんな大変な過去があって可哀想な雰囲気出すもんだから、そのギャップについていけず感情移入難しいなってのが強かったのかもしれない。

たまえの母ちゃんなんて空気ぞ。最後に5人で写真撮ってキャッキャするの、いいシーンなのかもしれないけど、たまえの実の母をしれっと排除して「我ら5人、天間一家!家族の縁はどんな形であっても強固!離れていてもそばにいる!」ってか?えぇ…?って引いてしまった。なんとも言えないこの感情は、何?

あと、たまえが臨死でここに来るのは家族の縁があったからってのは理解したけど、1ヶ月滞在したおばあちゃんと20歳の若者は何故ここに来れたんだろ。誰かとのつながりはもちろん無いだろうし、この地とゆかりがある感じも無かったので不思議だった。柴咲コウ死神(?)の采配というか考えがあっての事だったのだろうか…ううん?

家族の縁(血の繋がり云々の揉め事あり)、震災による不運の死を受け入れられない魂たち、生きるか死ぬかを選択できる魂、などなどの要素が多すぎて一つ一つが弱く感じてしまったのが残念だったかもしれん。

ってか、これ言ったから終わりだしスカイハイじゃなくなるけど、柴咲コウの役どころいるか?とまで思ってしまったし、なんなら父親も出てこなくても…とか思ってしまって。150分は長いと感じてしまう作品だったのは否めない。

個人的に「あの子は貴族」ですれ違う夫婦役を演じた門脇麦ちゃんと高良健吾さんが、今度は魂で繋がっている仲良しな恋人(でも死んでる)を演じてくれていたのが嬉しかった。この2人に関しては心の底から来世では幸せになってくれ!って思うことが出来た。

ロケ地の美しさとか、天間荘の古き良き感じとかも良かったしメインキャストたちの演技力ともかも見ていて良かった。文句たくさん書いてしまったけど、良いところもあった。柳葉敏郎もよかったし、イルカもかわいかった。

でもCGはなんかなあ!特にたまえが現世に戻るところ、もっと明るい感じで良くない?なんで不安になって色あいの中で雷落ちてるような中を進まなあかんの?たまえも‪笑顔だったけど、もしこれが私だったら「え、選択間違えた?」って一抹の不安抱えるようなそれは、なかなかななミスマッチな演出だったぞ???

あとやっぱり、どことなく説教臭いというか、意見の押しつけ感強いなっ!って思ってしまったのよね。「死にたくもないのに死んだ人がいるのに死にたいと思うのは悪!」って言われているようでちょっと気分悪かった。

言いたいことは分からんでもないけど、それでも考えて考えて我慢して我慢して、結果「自死」という道を選んだ人を死してなお追い詰めているように感じてしまったのが本当に嫌だった。これはもう完璧に個人の意見だし、私自身の経験や考え方による偏ったものではあるけど、気持ち悪いとすら感じてしまったので、もう…ねえ。

あとカメオ出演(っていうの?)が凄かったな。人によっては盛り上がるのかもしれないけど、私は見ていて余計だと思ってしまった。泣けそうなじんわり来そうなシーンにコミカル寄りな俳優(?)が出て来てどう思えと?って、なんかどういう目で見たらいいのか分からんかったわ。

あ、あとたまえの父ちゃんが助けた息子のパパ、水族館の館長は良かった。戦艦ヤマト作ってあげられ作ってやれなくてごめんな!って、なんかもう!そんなん気にするなよー!って泣けた。ファザコンだから父親と子のやり取りに弱いんだ、私って女は。

しかし三ッ瀬の人たちも物分り良かったな。三姉妹の母ちゃんに喝入れられただけで誰一人文句も言わず死を受けいれ、長年暮らした三ッ瀬とバイバイ出来るって、すごい。唐突に命を奪われたからこそ生にしがみついても良さそうなのに、みんな素直。すごい。

たまえも凄く良い子。どうやら壮絶な過去を持つらしいのに何であんな真っ直ぐに育ったのか。私だったらグレまくるけどなあ。

色々思うところはあったけど中盤までは面白かった。150分の長さというせいもあり後半だれたり、キャラやセリフに苛立ったり、CCのイマイチさや音楽の絶妙なあってなさ等が気になって感動しきれなかったけど。

オススメする?って言われたら微妙だなあ。
私は原作もスカイハイも知らずに見てしまったのが災いしてしまったのかもしれないので、原作をする人の意見を知りたい。

なんとも言えない映画だった。
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