great兄やん

ヴィレッジのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
4.2
【一言で言うと】
「“ムラ”の中の蛙たち」

[あらすじ]
夜霧が幻想的な集落・霞門村に暮らす片山優は、美しい村の山に建設された巨大なゴミの最終処分場で働いていた。母の君枝の作った借金の返済に奔走する一方、職場の作業員に目をつけられた優は、浮かばれない日々を過ごしていた。しかし、幼なじみの中井美咲が東京から戻ったことから、優の人生が変わっていく...。

やっぱ“村”ってロクなもんじゃねぇな(絶望)...実際どこ行ってもコミュニティは切っても切り離せないものではあるが、やっぱその中でも一番“澱み”がエグいんじゃねぇの😰…って思う。いやマジで。
全体的な閉塞感といい閉鎖的な人間関係といい...まぁこんな村ばかりではないのも事実ではあるけど、やっぱりこういったイメージがあるからこそ住みたいとも思えないんですよね😔

ただそんな集落の“黒い”側面を能の演目と絡めて描写するという藤井監督の発想力には脱帽だし、なんと言っても脚本と演出のオリジナリティがマジで突き抜けてる。特にストーリーを起承転結ではなく“序破急”の手法で展開するという卓越な芸当も相まってか、あらゆる要素が重厚な作品として見事に昇華しまくってましたね(・・;)...やっぱスゲェわ、藤井監督。

それに今作を語るに外せない横浜流星の凄まじい演技力も必見ですし、観る前からかなり期待はしていたが正直あのクオリティと存在感はまさに期待以上。虚空を見つめる瞳と淀みきった心が終始沈殿しているかのような彼の表現力は、まさしく過去のキャリアからは考えられないほどの“新境地”を感じました...

その他一ノ瀬ワタルの極悪演技も格別でしたし、HIGH&LOW出てた時から気になってた俳優だからこういったメジャーな映画に出てくれるのは何気に嬉しい😊
来月彼主演のドラマがNetflixで始まりますのでね...あまりドラマを見ない自分ですが、気になるので観てみようかと思います🤔

とにかく美しくも残酷な“ムラ”の実状が突き刺さると共に、あらゆる闇と幻想を内包しつつ絶妙な角度から絶望を植え付ける救いようの無さに終始胸がゾワゾワする一本でした。

日本の社会構造として色濃く根付く“コミュニティ”の概念。それは村や集落だけが抱えるものとしてではなく、都会や街、それに家族など、様々な場所でコミュニティは“呪縛”として抱えるものだと描き切った今作。

深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているように、どれだけ過去という名の“怪物”と対峙しようが、その過程で自ずと“怪物”になるものだと言わんばかりのラストシーンはまさに『新聞記者』同様、藤井監督ならではの絶妙な胸糞悪さを感じましたね😔...まるで普通に生きる事が一炊の“夢”であるように。