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ザ・ミソジニーの消費者のレビュー・感想・評価

ザ・ミソジニー(2022年製作の映画)
3.8
・ジャンル
オカルトホラー

・あらすじ
夫を奪われた女優兼作家のナオミ
夫を奪った女優のミズキ
根深い悪縁を抱えながらも2人の間には同じ男を愛した女として奇妙な絆があった
ある日、ナオミは過去にテレビで観たという奇妙な特番の話を語り始める
番組では母が失踪したという娘がインタビューを受けていた
彼女は母が不気味なポラロイド写真を拾った事から発狂、庭に走り出たかと思うと地面の黒く焦げた場所で消失してしまったのだという
更にその後、娘も何者かに殺されたのだ、と
ナオミはそれを芝居の題材として娘の役にミズキを指名、自らの住む森に囲まれた洋館へと彼女を招く
そうしてナオミとミズキ、そしてミズキのマネージャーである大牟田は稽古を始めるがやがておかしな事が起こりだす
洋館に潜む何かの魔除けとして映写された罪人女性達の写真に混じる謎の映像、度々響き渡る女の叫び声…
恐怖を抱きながらも稽古は続くが霊を降ろしたかの様なナオミの演技に引きずられ、ミズキもまた役に呑み込まれ現実と芝居の境目は曖昧になり、時に幻覚や夢遊病を伴っていく
それら全ての現象はナオミとその背後にいる者達の狙い通りのはずだったが…

・感想
「リング」シリーズを始めとした名作Jホラーを世に送り出してきた高橋洋監督によるホラー作品

闇に包まれた洋館の壁に映し出された復讐や非業の死を遂げた女性達の写真、CGと合成を駆使した老女の幻覚、黒沢清の感性とも被る様な絶妙に不気味な洋館の景観などの恐怖演出
芝居と現実が混じり合いミズキ自身も知らない歪んだ感情を見透かした様なナオミの言葉、呪術的な世界観
それらの孕む混沌に観る者を引き摺り込む様な舞台的演技
どれを取っても前半はJホラー元来の恐ろしさとその背景にある悲哀や狂気などがバッチリで話の複雑さから難解な展開を予期させる部分も高橋監督らしい良さがあった

しかしミズキの母が現れる後半からは突然、登場人物達の演技がそれまでの舞台的なそれから急激にカジュアルな物となり、世界観も大味で無駄に壮大な計画が絡みだす事で陳腐な物になっていく
前半とは打って変わってコミカルな要素も入ってくるし「何でこうなる!?」と驚いたし一瞬ガッカリした

でもそれこそ監督の狙いだったのでは?
前半の恐怖性はただのフリで後半からの展開の杜撰さやシュールさは昨今のJホラーの雑さに対する皮肉なんじゃないか?
そう考えると単なる陳腐化と片付けるのも違うのかもしれない
ラストで稽古から始まった怪奇現象や陰謀、儀式などは台本上の話と明かされた後に現実のナオミが芝居の世界のミズキと大牟田を目の当たりにするというのもその一環だったのかも

とはいえ現代Jホラーに対する不満は自分もあるけど前半がちゃんとホラーしていただけにそのまま結末までそれが維持されていたらなぁ、とはどうしても感じた
特に老女の霊がナオミに降りた場面の映像は久々にちゃんと怖い恐怖描写だっただけに惜しい
マネージャーの正体と思われたナオミが殺した自らの胎児という設定も面白かったしなぁ…
でも「霊的ボリシェヴィキ」と同じ様にただ監督の悪い癖が出ただけの可能性もあるんだよな…w
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