漫画の映像化に定評のある野木亜紀子の筆が冴えています。原作に無い「映画を見る部」と巻き戻せないビデオデッキ。
男子の第二次性徴の特徴である変声期。一度きりの短期間で済んでしまうので、フォーカスされることは少ないけれど、中学生男子の親となっては「もうあのかわいらしい声は返ってこない」という不可逆性に思い至り愕然とすることがあります。その切なさや当人のままならなさを、男性顧問や同学年の映画部部長は理解している。
これらの加筆要素が「ひとときの変声期」にある主人公の戸惑いを増幅させて見せ、『紅』の歌詞と重なることもあり、かつて一度も『紅』を良いと思ったことの無い私を「いい歌だな」と思わせしめたのです!
ただ2人の運命の日、クライマックスに向けて、ボルテージの高まりみたいなものはやや控えめ(駆け足な印象)を受けました。その点で爆上がりはしなかったかも。