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オッペンハイマーのスエのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
少なくとも「原爆投下を正当化している」なんて感じられなかったし、オッピー自身も「想像力がなかった」「悪魔の誘惑に負けた」わけでも無いので、昨年の空騒ぎは全くナンセンスだったと思います。加えて広島・長崎についての描写についても不足は無いと思う。

また、レーティングが「R15+」ってどういうことだろう?被爆者の表現がリアル過ぎたりするのだろうか?だとしてもそれを避けていては…と思っていたら全然違う理由でしたねーまったくもう。

単なるオッペンハイマーの評伝に収まらず、トリニティ計画と原爆投下後の彼の処遇についてのサスペンス要素が多くを占めていたので、言葉の応酬にかなり集中力が必要でしたが、『TENET』のようについていけないというような作劇ではありませんでした。

もし昨夏に全米と同時に公開されていたら、ウクライナへの核危機を想像して観たでしょう。しかし核保有国でユダヤ人国家イスラエルの進行形の所業、かつての核疑惑国イラン国内への攻撃、ガザへ原爆を落とせと宣う米下院議員が出てくる始末のこの今、より「取り返しのつかないこと」への警戒心を喚起される点でいいタイミングで観れたと思います。今は「それを使う者」の背後に自分たちがいることを意識しなければなりません。
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