スエ

PERFECT DAYSのスエのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.8
大都会を構成するほんの一粒に過ぎないひとりひとり。その中に必ずいるはずの、ルーティンを崩さず清貧を通す暮らしをしている人の存在を肯定する物語。上京中に観て良かった。

主人公が清掃を担当している、デザインに趣向を凝らし世界一のトイレテクノロジーを用いたトイレたち。どうも自意識に作用する何かがあって、見かけたことはあっても使ったことはない。あれらの公衆トイレは10年後も美しさと機能を維持できるんでしょうか?5年くらいで無かったことになりはしないかと斜に見ています。

あの「ご不浄」をグッドデザインにして何かを誤魔化している感じ。東京が繰り返す強力な再開発によって、庶民的な街の息遣いや、樹木とその木漏れ日が失われていることへの虚しさ。それを踏まえたとしか思えない脚本と小道具を取り揃えてありますが、どこまでヴェンダースの仕事なのだろうか?皮肉を含んだ細部に貢献しているのは誰だろう?

長年聴き続けているカセットを再生して仕事に向かう文化的な生活。でも「城東地区から首都高使って渋谷にトイレ清掃に通う…か?」そんなメタ視点の介入がなければ、ひとつひとつのエピソードはいい手触りでおすすめです。
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