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ファルコン・レイクのギルドのレビュー・感想・評価

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)
3.8
【空想・恋をチキンレースに使った代償と末路】
■あらすじ
ある夏の日。もうすぐ14歳になるバスティアンは、両親と歳の離れた弟と一緒にフランスからカナダ・ケベックにある湖畔の避暑地へとやってくる。
2年ぶりに訪れる湖と森に囲まれたコテージ。母の友人ルイーズと娘のクロエと共に、この場所で数日間を一緒に過ごす。

久しぶりに再会したクロエは16歳になっていて、以前よりも大人びた雰囲気だ。
桟橋に寝転んでいたクロエは服を脱ぎ捨てると、ひとり湖に飛び込む。「湖の幽霊が怖い?」泳ぎたがらないバスティアンをおどかすようにクロエが話す。
大人の目を盗んで飲むワイン、2人で出かけた夜のパーティー。自分の知らない世界を歩む3つ年上のクロエに惹かれていくバスティアンは、帰りが迫るある夜、彼女を追って湖のほとりへ向かうが——。

■みどころ
避暑地へ帰省し、帰省先の年上少女に惹かれる少年のお話。

バスティアンは避暑地先では居心地の悪いのか安全圏から湖・クラブパーティ・青年らの遊びを眺めるが、クロエはそんなのお構いなしに湖で服を脱いで泳いだりクラブや男友達との遊びに付き合っていく。

そんな対極的な存在の二人が少しずつ惹かれていくが、本作には
・幽霊の都市伝説
・遊びに使っている湖に幽霊が出る
・湖を泳いでいたらなんか足元掴まれてビビったw 
・湖畔にてお化けコスプレを撮影
…といった死を連想するシーンが随所にちりばめられていくのだ。

やがてクロエの男友達から湖畔にいる幽霊話を「ネットにないなら嘘でしょw」と小馬鹿にするが、クロエは「そこにいて感じ取れるから幽霊話は本当だ」と述べる。

このことから本作は単なる少年少女のひと夏の恋話には留まらない「空想」が主題の一つとして示唆される。
バスティアンとクロエは話していくうちにバスティアンは親の前でオナニーする事が一番の恐怖だ、クロエは経験済と言っていながらも処女である事を打ち解けたり「クロエの秘密」を知るために死に触れる遊びにバスティアンが乗り出す…など、「秘密」と「死」を連想するシーンも徐々に支配していくが…

全体的にアランテ・カバイテ「サンガイレ、17才の夏。」のような質感でひと夏の思い出を綴っていく。
その質感も良いけど、それ以上に「空想 / 秘密」への取扱の本質を描く怖さが魅力的な作品だと思う。

酒、タバコ、セックス自慢といった田舎社会のイキりアイテムを出したがる中で、得体の知れない秘密は秘密のままである方が魅力的だったり畏敬の存在になる本質を恋愛・特別な感情と重ね合わせていく。
そこに唯一無二の良さがあるけれども、若気の至り・仲間になろうとするチキンレースに乗る事への代償を痛烈に描いてホラー映画のような展開になっていく。
生と死を連想するアイテムが散りばめられているのも相まって、綱渡りのチキンレースに参加した男たちの生死をかけた危うさも持ち合わせていて、そこにビックリした。

ジャンルごと変えてしまう底力、都市伝説を調査しようとして白ける感じを上手く表現していて面白かった。
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