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ミカエルのギルドのレビュー・感想・評価

ミカエル(1924年製作の映画)
4.3
【ある画家の孤独・枯愛から生まれた遺物たち】
■あらすじ
著名な画家のクロード・ゾレは、画家志望の青年ミカエルを養子に迎え、二人で豪邸に住んでいた。
パーティーで出会ったザミコフ侯爵夫人の肖像画を引き受けるゾレだったが、彼女はミカエルを誘惑し、ミカエルもその美貌に魅せられてしまい…。芸術家の孤独とミカエルへの愛、そして死を、耽美的に描いたサイレント時代の傑作。

劇場での正式公開は今回が初となる。

■みどころ
カール・テオドア・ドライヤー セレクション vol.2より。
面白かった!
ある画匠、若い画家と夫人の恋愛を描いた話。

名画のルーツには俗物を味わえなかった苦痛と孤独があり、名画を輩出する裏には悲しい過去がある…な話ではあるものの演出がずば抜けて良かったです。

特に
・光と影の使い方
・映像の画角
・音楽
が決まってて凄く良い!

そのくらい音楽や部屋のアートディレクションがオシャレでだと感じるほど構図が決まっていてカッコよかったです。

この日は「吸血鬼」とセットで観ていたが、吸血鬼よりも光と影を効果的に使っていてスポットライトを当てる事=注目されることと見立ててその塩梅が秀逸でした。
スポットライトに充てられない孤立感を照度で示していたり関係性や心情変化に光や影を使い、それらを通じて名画を生む背景にあある孤独さ・愛の渇望が悲しい事に推進力として働く事を痛説した考えさせられる映画でした。
劇中で語られる偉大な愛は養子の青年が見せた純愛と自立なのかもしれないし、名画を生んで得た賞賛なのかもしれない。
どちらとも取れるが、その行方を明かす事なく本作は幕を閉じる。

ここまでのドラマをサイレント映画の文法で
・俗物におけるスポットライトが当てられない
・画竜点睛が出来なかった悔恨
・芸術に痛みが伴うこと
・残したものに意義があるか?
といった哲学的な問いをミニマムに映した傑作でした。
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