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夜明けのすべてのギルドのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.4
【ポラリスの出会いが齎す夜明けの見え方の変化】
■あらすじ
PMS(月経前症候群)のせいで月に1度イライラを抑えられなくなる藤沢さんは、会社の同僚・山添くんのある行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。

転職してきたばかりなのにやる気がなさそうに見える山添くんだったが、そんな彼もまた、パニック障害を抱え生きがいも気力も失っていた。

職場の人たちの理解に支えられながら過ごす中で、藤沢さんと山添くんの間には、恋人でも友達でもない同志のような特別な感情が芽生えはじめる。

やがて2人は、自分の症状は改善されなくても相手を助けることはできるのではないかと考えるようになる。

■みどころ
面白かった!
PMS(月経前症候群)で上手くいかない女性、パニック障害で人生の色々なものを手放した男性のお話。
杉田協士監督によると最新作『彼方のうた』の講師役の人が参画した作品で、不思議と杉田監督らしい質感・日常生活が詰まっていてマルチバースみを覚えた温かい作品でした。

藤沢はPMSによって前職を退職し、自分の抱えた病気によって母親や職場に迷惑をかけた事に後悔していた。
やがて藤沢はプラネタリウムを手軽に観れるおもちゃの製造会社に転職をする。
前職と違って規模は小さいながらも社員同士は和気あいあいとしていて支えられながら仕事をしていた。

そんな中で山添さんが中途で入ってきて仕事をするも、炭酸水の音が耳障りで怒ってしまう。
それから暫く経って仕事をしていると山添も前職でパニック障害で動けなくなり、藤沢は職場に置き去りになった錠剤・山添の発作によって気づく。
藤沢は少しずつ山添を支援し始め、二人の関係に少しずつ変化が起きるが…

本作は生きていく中で病気によって思うように上手くいかずに疲弊する人々が互いに支え合って前へ進もうとする温かさを描いている。
劇中では藤沢、山添ともに転職したプラネタリウムを手軽に観れるおもちゃの製造会社で働いて自分を客観的に見つめていく姿をじっくり映していく。
その中で本作は夜を迎える事、夜明けを迎える事は等しく誰でも迎える。暗闇の中は考えて決める時間という文脈で語っていく。
そこに等価に不可逆的に絶望と希望が繰り返される中で、暗闇を絶望と夢を見る時間と捉えていく人生の営みの中でポラリス的な存在の大切さを温かくゆっくり流れる時間で指し示すのが素敵な映画だと感じました。

特に星空を見上げる事が比喩的に手放した人間にとっての迷路を抜ける時間に繋げ、再び空を見上げた時には何かを手にしているのが良かったです。
その人にとってのポラリスに出会う事で夜明けの為に夜を頑張る…改めて光と闇の使い分けが巧みな映画だと思う。

ハンデを抱えた人が最善を目指して友情・恋愛感情とは別の感情で前へ進み、その中で自分の軸を自己認識・決定する傑作でした。
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