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エゴイストのRのレビュー・感想・評価

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.8
タイトル『エゴイスト』かー、予告編見て、ゲイの恋愛モノかー、おもんなさそうやな! おー、鈴木亮平ついにゲイの役かー、どれほど多くの人がその実現を夢見たことかー、てか、宮沢なんたらって人、またゲイの役するんやーすっきゃなぁ、His相当ビミョーな映画やったなぁ……まあ、タダで見れることになったし、駄作覚悟で見てみるかー、で、見始めて、うわー、こっからどんなしょーもないドロドロ恋愛モノになっていくんやろ、ドッチが先に冷めるねや? ドッチが先に嫌になる? ほんでドッチが浮気するねや? 誰とや? え? と思っていた愚かなる僕のすべての期待が……中盤で見事に裏切られました……え……うそ……こっから話どうなるん……ドキドキしました……そして、見終わってタイトルが出てきたときは、は? どこがエゴイストなん? だれが? どこにエゴイストの要素ありましたか? これタイトルが合ってなさすぎやし、予告編とぜんぜんちゃうやん!!! こんなイイ映画なのに、あの予告編はもったいなさすぎる!!! というのが正直な感想です。僕のゲス根性丸出しの予測を遥かに上回る、めちゃくちゃいい映画やった!!! ひとことで、この映画のテーマをまとめるとしたら、愛です。愛の映画です。恋愛映画として始まって、愛の映画と昇華する。主人公は鈴木亮平演じるファッション雑誌の編集者、浩輔。14歳のときに母を亡くし、おかまやーおねぇやーといじめられて過ごした田舎を出て、東京でゲイの仲間たちとのびのびと暮らしている。まず、仲間たちといかにも楽しそうに談話してる浩輔を演じる鈴木亮平の演技にビックリ! そんなめちゃくちゃあからさまというほどではない、絶妙にお姐さんな表情、しゃべり方、言葉遣い、所作、うおっ、めちゃくちゃリアル! こんな感じの人おるわ! ファッション業界の人だから、ちょっとだけいろんなところに洗練されたキレイさがあるのもリアル! これが演技だとは信じられない! 顔は普通に鈴木亮平なのに、まったく違う人に見える! すごいなーこの人は! 彼は、お肉のついてきた体を何とかするために、友人の紹介してくれたパーソナルトレーナー龍太と筋トレを始めることになるんですが、この龍太を演じるのが宮沢氷魚。こんな線が細くて色白な人が、がっしりした鈴木亮平のトレーナーとは、立場逆やん!とちょっとだけ気になったが、そんなことどうでもよくなるくらい完ぺきな二人のケミストリー! 少なくとも役を演じてる間は、このふたり、実際お互いに恋していたな! 疑いなく恋してる! 見た目のみならず中身もきっちりお姐さんなやさしい浩輔に、まじめに誠実に慕ってる感じの年下の龍太君は、とつぜん歩道橋で浩輔にキッス……うお、いきなり大胆だな、と思ってると、そのあと浩輔のおうちに行って激しいセックス! ものすごい熱気とリアルさ! しかも、えええ! ロールプレイ的にそっちなんですか! サプライズ! 愛撫も口淫もしっかりやったうえ、ちゃんとアナルセックスも演じてて、すごいなぁ。かなりなまなましいので、苦手な人は要注意かも。しかもそのあとも、シャワーで今度はそっちからこっちへの変化が楽しめ、まぁこっちの方がイメージ的にはしっくりくるわなぁ、と笑ってしまった。実は、龍太はシングルマザーと二人で暮らしてて、お母さんを支えるために一生懸命働いてたりして、結構お金が大変そうだというので、浩輔は、うちに来るたびに、お母さんに高価なおみやげを買ってあげたりして、わー、もう好きで好きでしょうがないんだなぁって思ってた矢先、突然、もう終わりにしたい......と言い出す龍太。体の関係がなくてもいいから、今まで通りでいたい浩輔。だが龍太には、浩輔に明かしていない、秘密があったのだ。龍太は、このまま浩輔と一緒にい続けると、生活を成り立たせることができない、と言う。絶句して立ち尽くすしかできない浩輔のうちを出て行く龍太……はっと我にかえって電話する浩輔、何度も何度も電話する浩輔、しかし、龍太は電話に出ない……一体ふたりはどうなってしまうのか? このあたりから、いよいよ人間のエゴイズムがむき出しになり、ドロドロの修羅場に対峙することになるのかーーーーとヒヤヒヤする僕でしたが、予測していたのとは、ちょっと違った展開になっていく。とはいえ、こんどは金銭的なお話がからんできて、うっわー、これはうまくいかなかったらとんでもなくえぐいことになるぞ! いつまでこの状態もつんやろ、ぜったいやばいわー、と思ってたら、まさかの、え!!!って声が出てしまう展開が!!! あまりの衝撃に呆然自失。そして、ここから、まさかそっちに話が向かうとは……まったく予期せぬ展開。気がついたら、涙がこぼれ始めていました。ぽろり、ぽろり、涙が。よくあるただの恋愛映画と思っていたものが、真に愛の物語になっていくそのプロセスに、僕は、心の底から衝撃を受けました。僕の浅はかで破廉恥な野次馬根性が、深い深い人間の愛の美しさのなかで、完全に解けてしまった。そして、エンドクレジット直前に現れるタイトル『エゴイスト』。いやいや、タイトル間違ってるよ。これのどこがエゴイストよ。人のこと好きになって、その人のことを助けてあげる、その人を幸せにしてあげたいと願い、行動する。これが愛でなくて何が愛であるものか。僕には愛の意味が分からないって言ってたけど、愛の意味なんて分からなくてもいいんよ。愛の意味を分かってるふりして、愛の行動がとれていない人間が、この世にどれほど多いことか。愛の行動がとれるなら、愛の意味なんて知らなくていい。まさか、こんな深いところに連れて来られるとは思わなかった。僕的には、浩輔の気持ちが痛いくらい分かるし、浩輔と龍太の関係とは、やり方は異なるけど、同じようなことしてしまうだろうな、てか、実際してしまってるなぁ……😓 と、いたたまれない気持ちになった。いやーほんとに。今まで見た映画で、いちばん期待を裏切られた作品であるし、いちばん展開に驚かされた作品と言えるでしょう。素晴らしかった👏 僕が一番すごいな、と思ったシーンは、テーブル越しにお金のシーン。このシーンがうまくいかなかったらすべてが台無しになるというくらい重要なシーンで、この上なくデリケートな瞬間。その長いタイミング、演出、台詞回し、演技、などなどすべてのバランスがあまりにも完ぺきだった。息をのんだ! 全編、カメラが役者さんたちにすごく近いので、演技がめちゃくちゃ大事な映画やと思うけど、みんな素晴らしかった。特に、やっぱ浩輔演じる鈴木亮平がすごい。パーフェクトなゲイメンっぷり。ちゃんとファッションも鎧に見えたよ。宮沢氷魚くんは、性的な色気のなさが何となく生命力の弱さにも見えて、それも演技なのかと思うとすごいなー。で、本作でもうひとり、最も重要な役割を果たすあの人も、申し分なき完ぺきな演技、存在感。そして彼らに近い映像としては、カメラがめちゃくちゃ揺れて、ブレてなので、多くの人が酔ったり見にくかったりしたみたいやけど、のめり込み過ぎてほぼ気づいてなかった。唯一気になったのは、龍太の家で、映像からものすごく狭い感じが出てたときだけ笑 で、全編かなり重い雰囲気ではあるんやけど、ときどきぷーって吹き出してしまう可笑しなシーンもいくつかあって、特においで!おいで! おいでをする人あんただれーーーーー!!! のとこ笑 鏡に向かってパーフォマンスしたことのある多くの人にとって、アイタタタって気まずくなること間違いなし笑 あともう一個、後半で笑ったシーンあるけど忘れてもーたな。ちなみに、後半は劇場内で泣いてる音があちこちから聞こえまくってましたし、最後の最後には僕も涙が……🥲 エンドクレジット終わっても止まらなくて困ってしまいました。さて、長くなってきたのでそろそろ筆を置きますが、最後に、本作はぜひとも内容が分かったうえで、もう一回見てみたいなと思います。こんなに高評価になってしまったのは、鑑賞前の期待値があまりに低すぎたのと、ストーリーの意外性に驚きすぎたからかもしれないので、ちゃんとすべてわかったうえで、もう一回見て、今の感想のままか、はたまた低下するか、ひょっとしたら上がるかも⁈ というのを確認したい。というわけで、タイトルとトレーラー見て、うーん、ビミョーそーと思った人には、ぜひとも見てみてほしい一作です。素晴らしかった👏
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