LalaーMukuーMerry

ベルリン・フィルと子どもたちのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.5
これは魂を揺さぶられる素晴らしいドキュメンタリーでした。
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サイモン・ラトルの指揮するベルリンフィルの伴奏で、250人もの子どもたちがストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」を踊るという公演プロジェクト。そのために集まった多くの国の様々な子供たち。どうやって選んだのか分からないが、ダンス経験のある子、ない子。人種、宗教、年齢も境遇も色々な子供たち、難民の子もいる。やる気のない子も結構多い。
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そんな子供たちが振付師ロイストン・マルドゥームと共同振付師のスザンナ・ブロウトンの真剣な指導によって、次第に変わっていく様子が描かれます。特にカメラは、踊りは初めてという15才くらいの子たちを集めたクラスの練習風景、その中でも数人の子に焦点を当ててその成長を追っていく。
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決してすんなりと変わったわけじゃない、難しい年頃の子どもたちだ。真剣になった自分を晒すのが恥ずかしくて、笑ったり、斜に構えたり、仲間と無駄話をしてしまう子供たち。だけど、指導者は子供たちの心を見抜いている、踊りからわかるのです、心は体に現れるから。二人の真剣な指導の言葉には唸ります。ダンスって奥深い。
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子供たちへのインタビューから伝わってくる彼らなりに人生に真剣な様子にも打たれます。
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地の底から吹き出るエネルギーを感じる「春の祭典」。この音楽にはどういう意味があるのか、サイモン・ラトルの言葉から、現代に通じるその深い意味を知って驚きました。その意味を感じて踊るラストの公演シーンは圧巻でした。
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指導者自身が語る自分の子供時代の経験や、音楽や踊りについて語る言葉も良かったです。芸術家の言葉は、本質をついて鋭いなと感じることがある、この作品にはメモしておきたい言葉がたくさん出てきました。
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今日のNHK-BS「奇跡のレッスン」は奇しくも同じダンスレッスンだった。ブロードウェイ・ミュージカル「コーラスライン」を日本の高校生たちが夏休みに1週間の集中レッスンで踊る。指導者はコーラスライン初演当時から踊っているトニー賞を受賞したバーヨークさん。こっちもすっごく良くてめっちゃ泣けた。
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舞台の役を表現するには、役の気持ちになり切らなければならない。そのためには同じ気持ちになった自分の経験を思い出すことで表現がグッと豊かになる。その経験とはどんなことだったのか、それをみんなの前で一人一人が話し始める。自分の悩みや不満、将来の夢や希望を語り、素の自分をさらけ出すことで、みんながお互いの知らない姿を改めて知り、気持ちがつながり、踊りがまとまっていく・・・
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こんな素晴らしい先生に出会って、一生懸命になれた経験は人生の宝物。がんばれ若者。
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いいものを二つも見せてもらった一日だった。感謝!!