ねこ無双

地獄のねこ無双のレビュー・感想・評価

地獄(2009年製作の映画)
3.8
地獄めいた映画製作の苦しみを描いたドキュメンタリー。
アンリ・ジョルジュ=クルーゾーの1964年の未完作『地獄』。
監督の逝去後30年を経て夫人が語る撮影秘話や残されたフィルムの断片で構成されている。
映像だけ、音はない185缶から成る断片。かなり実験的な映像の数々。
当時その映画の助監督だった(!)コスタ=ガブラスの談話も

クロード・シャブロル監督が同脚本で描いた映画、『愛の地獄』は鑑賞済。ストーリーやムードを理解している前提で観れたのでよかったです。

映像の中のロミーはとても肉感的で刺激的。
ライトに照らされてロミーの姿が万華鏡のように彩を変えてゆく。
ロミーの瞳の美しさ!
これは夫が嫉妬で気が狂うのも納得。
夫役の代役はジャン=ルイ・トランティニャンだったそう。

マルセルとその妻オデットの物語。
ホテルを経営する新婚夫婦。
美しすぎる妻へ嫉妬と妄想の沼にハマっていく夫。
もし映画化されたなら…という即興劇のような再現ドラマ部分が都度挿入されるんだけど、どうしてもクルーゾーのカットと比べると安っぽく見えてしまうような。。
夫マルセル役をジャック・ガンプラン、妻オデットをベレニス・ベジョと配役が豪華

当時のクルーゾーはフランス映画界で最も役者と資金を集められる監督だったそうで、この映画も大きな予算を与えられていた。
が、結局は破綻してしまう。。
このドキュメンタリーで見られる数々の映画の断片は当時としては斬新だったのでは。
ホドロフスキーの砂の惑星の未完を語ったドキュメンタリーしかり、もし完成してたならば…と思わずにはいられない

他にも音楽が素晴らしかった。
ブリュノ・アレクシウがアンニュイ、ジャジーな曲で彩る
Bruno Alexiu - L’enfer generique