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そばかすのmのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
4.8
新年早々救われた気分になった。三浦透子さんのインタビュー内容含めてとても良かった。蘇畑佳純のような人が主人公の映画が作られるという、それ自体がものすごく意味のある事だと感じる。
私はアセクシャル・アロマンティックではないけれど、人生における恋愛の優先度がめちゃくちゃ低いから、恋愛が生活のメインになる人達とは価値観のズレを常に感じていて、そのズレは年齢を重ねるたびにより大きくなっていってしんどさを感じていた。仕事や趣味など、人生色んな要素があって、佳純にも色んないい所があるのに、「恋愛をしていない」一点だけで、「かわいそうな人」とか「不完全な人」というレッテルを貼られてしまうのはやっぱりおかしい。
恋愛、結婚が当たり前だという価値観に違和感を抱くというのは、今の時代もしかしたら多くの人に共通する経験になってきているのかもしれないけれど、アセクシャル・アロマンティックの佳純には、「多くの人に共通する」と一括りにできない特有の苦しみがあって、それは同じくマイノリティであるゲイの同僚やお見合い相手の木暮にすら理解してもらえないことが分かる演出が印象的だった。
社会は簡単には変わらないし変えられないけど、まずは自分の身近な環境の中で1人でも「分かってくれる人」と出会えれば、そして私も「分かってあげられる人」になれればいいなあと思う。
どんなに苦しくても、同じ属性、同じ価値観の人間が他にもいると分かるだけで大きな希望がもらえることがある。だから、このような映画が作られたように、佳純が紙芝居で新解釈のシンデレラを取り入れたように、映画やドラマ、音楽など身近に触れることの多い創作物の中でこれからもどんどん多様な属性、価値観のキャラクターが登場するようになるといいなと改めて思った。
三浦透子さんは演技や佇まいが素敵なのはもちろん、パンフレットのインタビューの内容がめちゃくちゃ良かった。特に「自分が抱える複雑なものを、わかってくれない人のために単純化して説明する必要は無い。複雑なものを複雑なまま抱えていていい。」という言葉に救われた。マイノリティの役をこういう方に演じてもらえると安心できるし、説得力も増すしいいなあと改めて思いました。
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