アニマル泉

拳銃は俺のパスポートのアニマル泉のレビュー・感想・評価

拳銃は俺のパスポート(1967年製作の映画)
5.0
宍戸錠が自ら「一番好きな作品」というマスターピース。「殺しの烙印」「みな殺しの拳銃」とともに神3作だ。エースのジョーはコミカルな芝居は排して冷徹な殺し屋を演じている。笑わない、サングラスもない。冒頭から嵐寛寿郎を狙撃するエピソードで緊迫する。狙撃は離れた距離が必要だ。本作は「距離」の映画なのである。人物関係もそれぞれ距離感が保たれてラブシーンのような密着する場面は内田朝雄と情婦の足が絡み合う場面を例外にあまりない。小林千登勢はやたら触られるが徹底的に拒否する。そしてこの「距離」がクライマックスで見事に破棄される。距離を廃棄して密着するまでのスリリングなアクション映画なのである。本作は「自動車」の映画でもある。前半のスクラップ工場、次々と海に落とされる乗用車、カーチェイス、ジョーが千登勢の身の上話を聞くのはトラックの運転席、そしてなんといってもクライマックスの大炎上。本作では自動車は決して安全な場所ではないのだ。ストーリーは脱出の物語である。飛行機での国外逃亡が失敗して舞台は横浜へ。「なぎさ」というモーテルが洋風の木賃宿なのに食堂がダンプ運転手が集まる大衆食堂という不思議な空間だ。女将の武智豊子が圧巻である。だるま船が面白い。クライマックスは埋立地の荒野だ。口笛のメロディーの劇伴曲が流れ、風で土埃が舞う。1970年前後の邦画に特徴的な空間だ。「殺しの烙印」「荒野のダッチワイフ」「煉獄エロイカ」日活、ピンク、ATG、時代感が充満する。ハエから銃撃戦へ。若き杉良太郎が出演している。脚本は本作がデビューの永原秀一。
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