まるちよ

Pearl パールのまるちよのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
2.5
3部作の2作目。
「X」のおおよそ60年前、パールがどうしてイカれた殺人鬼になったのかが判明する話。

ぶっちゃけ結論としては「もともとイカれた気質を持ってたけど家庭環境のせいで爆発した」に過ぎないから大した話ではない。
閉鎖空間に近い孤独な田舎の農場。障害を持った父親と、そのせいで厳格な母親、若さゆえに外の世界に夢を見る若いパール。
「キャリー」に近い話のノリで、外からの刺激と抑圧された家庭環境の間で徐々にイカれていく。
その過程でちょろちょろ殺人を犯していくんだけど、劣等感や嫉妬感から衝動的に殺しちゃう感じ。

新しいサイコホラーのアイコンになるかと思ってたんだけど、動機が普遍的なのでカリスマ性が無いのが残念。
なんか普通に気に入らないから殺しを繰り返すわがまま娘といった感じで、物語全体通してちょっと退屈だった。
殺しの手法や表現も特に凝ったものではないし、ホラー映画としては普通の部類だと思う。

ただ、この映画で特筆すべきはXと比較してとても明るく彩度を上げた映像と、パールの表情や演技。
牧歌的な光景や無垢でキラキラした憧れを抱くパールの心情を写したような、明るい画面表現は絵本の世界のようで美しい。
ヴィンテージな世界観にそれがとても映えるし、映像表現のおかげで殺しのシーンも陰惨さが無くむしろコミカルに映る。
パール役のミア・ゴスは素晴らしい演技で、無邪気だけどすぐに癇癪を起こすサイコな少女を表現している。
ラストの笑顔のまま涙を流す長尺のシーンはしばらく頭に残るほどおっかなかった。

殺人鬼や悪役に気の毒と思わせるバックボーンを追加するのはあまり好きではないけど、「あ、もともとイカれてたんだ」と割り切って見れて良かった。

オールドアメリカンな世界観や、前述の彩度高い牧歌風景。個性的なパールの演技等、ホラーというくくりだけでなく楽しめる映画なので万人におすすめできる。
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