映画を観て泣くことはたくさんあるが、震えるほど泣いた作品は数える程で、本作はそんな数少ない1本となった。
他人のことを100%理解することなんて不可能で、だからこそ私たちは相手を理解したい、相手に理解して欲しいと願う。
でもきっとそれ以前に自分のことだって100%理解してあげられていなくて、名前のない感情に、言葉にならない悲鳴に、ずっとずっと支配されている。
それでも理解したい、理解して欲しいと願うことを辞めてはいけなくて、見えないものを見えないままに描いていた監督が、覚悟を持って見えない部分を描いた本作に、強い思いを感じた。
だからこそこれまでの是枝作品とは明らかに違っていたし、それは脚本を務めた坂元氏にも言えることで、是枝作品でも坂元作品でもない、唯一無二の作品になったのだと思う。
描きたい世界が明確にあるお二人なだけに、それを超えてでも描きたい、残しておきたいと思った作品なのではないかと、勝手に解釈した。
拭っても拭っても闇は襲ってくる。
だけどその隙間からも光は降り注ぐ。
それならば、この手が泥に塗れるとしても、自分の無力さに苛まれるとしても、抗いたい。抗える人間でありたい。
悲しいほど温かい旋律に包まれながら、怪物のように大きなその思いに圧倒されながら、泣き疲れた自分のなかに残ったものは、とてもシンプルな、大切な人への思いだった。