監督自身が傍聴したという実際の事件の裁判を描いた作品。
作家のラマは、生後15か月の娘を殺害した罪に問われた女性ロランスの裁判を傍聴する。
セネガルからやって来たロランスは、完璧なフランス語で、淡々とその半生を語り始める。
彼女は本当に娘を殺したのか?
裁判記録をそのまま用いた台詞と恐ろしいまでの「間」が、映画館の客席を傍聴席に変える。
少しずつ少しずつ浮かび上がってくるロランスというひとりの女性の輪郭。
それは対峙するラマの輪郭をも浮かび上がらせる。
そしてその輪郭が濃くなっていくとともに、逃げ場のない息苦しさに支配されていく。
これまでドキュメンタリーを手がけてきた監督が作り上げる法廷という空間は、そこに充満する空気の肌触りまでも感じられるほどのリアリティを持って存在する。
しかしその根底にあるのは映画であることの必然性と映画であることの美しさ。
息がしづらいほどの苦しさを感じながら、美しいと見惚れてしまう。そんな瞬間が何度もあったのが印象深かった。
またひとり追いかけたい監督を見つけた。