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バイオレント・ナイトのTEPPEIのレビュー・感想・評価

バイオレント・ナイト(2022年製作の映画)
3.7
「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」を最速上映で鑑賞し、まだ興奮冷めずでレビューを上げていない。何なら既にリピートしてしまっているくらいハマっているのだけど、こちらは試写会で鑑賞してレビューの期日があるので先に「バイオレント・ナイト」をレビュー。「Mr. ノーバディ」、「ブレット・トレイン」の87ノース・プロダクションズが製作したバイオレンス・サンタアクション。所謂C級映画にある悪霊サンタがカップルを殺しまくるような酷いプロットとは違い、デヴィッド・リーチがプロデュースし、「ヘンゼル&グレーテル」や「処刑山」でカルト的人気を得ているトミー・ウィルコラ監督がコンビを組んだ意欲作。
バイオレンス・アクションに注力している87ノースの最新作は、遅咲きながらノリに乗っているデヴィッド・ハーバー扮する飲んだくれサンタが、偶然にも資産家一家の家に押し入った強盗と対峙する物語。

今までのこういうサンタ・バイオレンス・アクションはサンタが悪役に徹しているのだけど、オッさんヒーローとして北欧の絶対的存在のサンタがちゃんと子どもにプレゼントを渡すという設定がブレていないのに、暴力しまくるのが妙で面白い。ウィルコラ節全開の人体破壊と血まみれアクションは爽快感があり、サンタならではの能力などを駆使していて見応えはあったが、途中からはサンタのコスプレしたオッさんが悪人を殺しまくっているだけに落ち着いていたのが消化不良。

ただ「ヘルボーイ」が相当嫌だったのか、ハーバーの演技は実に楽しそうで、悪役もカメレオン俳優のジョン・レグイザモだからこの2人のケミストリーで十分楽しめる。
基本ファンタジーな存在が主人公なのに何でもありにはせずに、スリラーやコメディ要素を散りばめており、時々入る他作品へのオマージュはストーリーの穴を埋めてくれるには打ってつけである。まずサンタさんが物欲主義な現代の子どもに嫌気を差しているのが笑ってしまうし、プレゼントの内容とか風刺が聴いていて面白い。明らかにアメリカナイズされたサンタ像と、子どもたちが抱くクリスマスの素敵さとのギャップを嘲笑っている。ストーリーの導入の斬新さはピカイチで、その爆発力を最後まで続かせていれば最高のコメディ・バイオレンスの誕生だった。
想像していたよりもテンポはスローだったが、思わずニヤリとしてしまう悪役たちの掛け合いや、「んなバカな(笑)」って笑ってしまうサンタ流の殺害方法の狂気っぷりなどトミー・ウィルコラのアクション好きには満足できる作品に仕上がっている。

トーン的には「ヘンゼル&グレーテル」に近く、童話破壊王としてのクレイジーさは今後どんな作品を生んでくれるのか実に楽しみ。しかしさ、日本も公開時期クリスマスにすれば良かったのにってみんな思ったはず。ステレオタイプなファミリードラマは含まれているのだけど、ファミリーでは見られないほどのゴア描写なので痛々しいのが弱い人は不満もあるだろう。でも最近フランチャイズ映画しかヒットしないし、全米のボックス・オフィスなんてアメコミしかずっと首位にいなかったから、こういうオリジナル作品って本当にめっきり減ってしまって、どんどん無くなってしまう。ドル箱シリーズが業界を支えているのはもちろんだけど、2020年以降は特にフランチャイズしかヒットしていない印象が強い。だからこういったストレートで奇をてらうストーリーを持った、バカでもいいから、オリジナル作品を観たいわけだよって鑑賞中この映画の爆発力を楽しんでいた。

ストーリーに動きは殆どないけども、バイオレンス・アクションファンには楽しめることは間違いない。
総評として、「バイオレント・ナイト」はデヴィッド・ハーバーのエネルギッシュな演技のおかげで最後までバイオレンス・アクションに見入ることができ、新たなクリスマス・ムービーを予感させる斬新さを持った、監督の特色を存分に活かした作品と言える。
メリー・クリスマス🎄🎅🎅🎅🤶
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