I:強烈!素晴らしい!!!演出と衣装のコンセプトがバッチリ。《パルジファル》と同じなんだと。
1幕のラストでここまで興奮、感動したことはなかった。合唱がとにかくすごいし、衣装のガウン、マントの裏地の色を使ってドラマを音楽を表現するのがすごくいい。
ベチャワ、バイロイトの「妖精ローエングリン」よりはるかにいい。11:39
ll:やはり幕切れが素晴らしい。合唱の表現力がすごい。オルガンをここまで意識したこともなかったな。
エルザや民衆の心にまかれた毒が悲劇の予感をさそう。コレっておとぎ話なんかじゃなく、ものすごい悲劇、人間の奥底にある根源的悲劇なんじゃないか?
幕間のネゼ・セガンのちょっとしたローエングリンレクチャーも勉強になる。「ローエングリン」は「指環」以降のライトモチーフが中心にドラマが進むのでなく調性を軸に動いていくのだと。『ローエングリンはイ長調でエルザは変イ長調、2人は絶対にハモらない』と。ネゼ・セガン、幕ごとに衣装を替え、髪を金髪に染めてるよね?で、マニュキュアも金でおしゃれ。
メト140年の歴史で最も(600回以上)上演されたワーグナーが「ローエングリン」だって。13:38
以上、映画館で幕間に書いた1stインプレッション。
ここからは24時間経って家で落ち着いて。
METには行ったことない。アメリカにはグアムもハワイも行ったことないので当然。
MET来日公演は「コジ」(‘97)、「薔薇の騎士」(2001)、「ヴァルキューレ」(2006)を観た。ライブビューイングは映画館で15本ぐらい、自宅TVで5本は見ている。ワーグナーもこれで6本目だが、今まで見たうちでも最高の舞台映像だった。これほど歌唱、オケ、演出、美術がうまくハマって燃焼するのは珍しいのでは?数日前に見たバイロイトの妖精チック《ローエングリン》は同じベチャワの歌唱だが、こちらの方が圧倒的に素晴らしくまったく比較にならない。
ネゼ・セガン、10年ほど前にゲヴァントハウスで聴いたが、こんな熱い指揮をするとは想像もしてなかった。
ちょっと残念なのは歌は悪くないんだけど、エルザのタマラ・ウィルソンの体形が巨大過ぎてること。オルトルートのクリスティーン・ガーキーと似たような身体つきで、もうちょい乙女っぽい見てくれの方がいいと思う。まあこういうことはオペラ歌手に言ってもせんないことではあるが。
開幕前にインタヴュアが『廃墟となった地下世界云々』と解説して始まる。舞台の中空に大きな楕円形の穴が開いていて、そこから月が見える。1幕前奏曲の間、この月が表情を変えていく。
ローエングリンとテルラムントの決闘はテルラムントは剣を手にしているが、ローエングリンは素手でなんと武道っぽい仕草でテルラムントを倒す。ここは異様な迫力があるし幕切れの合唱のパワーが凄い。130人と言ってたかな?男声2部と女声。合唱が舞台にたくさんいると舞台がごちゃごちゃしてうるさく感じるがまったくそういうことはない。整然と並んでいるせいもあるが、音楽にあわせて衣装の裏地を一斉に見せて劇的盛り上げを演出する。完全にコロスなのだ。
演出のフランソワ・ジラールと衣装のティム・イップの勝利。
「パルジファル」も同じ手法なのだろうか?絶対見なきゃ!
2幕でのテルラムントの詭弁はまさに民衆を扇動する陰謀論者である。「ローエングリン」を今まで盛り上がりに欠けるドラマだと思っていたが、今回ドラマの緊張がどんどん盛り上がり3幕の「名乗り」で最高潮に達することを実感した。そしてローエングリンが去ろうとする時、中空の穴が向きを変えると、それがあたかも《未知との遭遇》の宇宙船に見えてしまうのだ。廃墟で苦しむ人類に遣わされた宇宙からの使者?そしてエルザの弟ゴットフリートは子供ではなく青年、ビヨルン・アンドレセンじみたイケメン青年、ちょっとイエス・キリストっぽい衣装?で色んなこと(ゴットフリートの再生or誕生、エルザの死、ローエングリンの喪失)が重層的に重なって3幕終盤の感動たるや筆舌に尽くしがたい強烈なものがあった。