留

摩天楼の留のレビュー・感想・評価

摩天楼(1949年製作の映画)
5.0
ポピュリズムが横行し、1人1人の国民が自分の頭で考えない奴隷化した現在の日本を先取りしている。
1人の人間が全体の、組織のコマになってはいけないという共産主義、全体主義批判であり、みんな一緒の横並びを求め個性的であることを押し潰そうとするポピュリズム批判である。
特に大衆を煽る新聞社を実に的確に描いていて、現代のポピュリズム政党の代表、維新の会にべったりの関西TV局各社や読売新聞は70年以上昔のこの映画をよく見て、レイモンド・マッセイが最後に取った行動を真似してほしい。
自分の芸術=建築の信念を絶対に曲げない建築家ゲーリー・クーパーが終盤、裁判で自らの信念を述べる演説シーンは、フランク・キャプラやロバート・リスキンならもっと分かりやすい内容にしただろうが、この映画、パトリシア・ニールの冷たいまでの美貌と映画中に登場する鋭角的建築物に象徴されるように、案外ピッタリはまっている。
金や社会的地位名誉のために自分の信念理想を曲げるのか否か、という大きなテーマに狂おしいまでの激情的恋愛を絡め、さらに大衆を扇動するメディアと扇動される大衆まで描く、当時にしたらぶっ飛んだ映画だと思う。
パトリシア・ニールの鞭打ちシーン、やっぱりもの凄い迫力。
あれでゲーリー・クーパー不倫に走っちゃったのかな。
キャスティングも素晴らしい。主役3人がすごくいい!
《生活の設計》では画家になんか絶対に見えないゲーリー・クーパーが、ここでは建築家にピッタリだもんね。さすが。
ビルの窓から見える外の景色がちょっと残念だな。
留