1956年公開。このところハマっている警視庁物語シリーズの記念すべき第一作。刑事物の原点と評される事が多いけど、自分にとっては近年の犯罪映画よりもずっと面白い。聞き込み主体の地道な捜査方法にリアリティを感じるし、刑事達の人物描写が自然で作為的な様子が殆ど見られないのが良い。スター俳優不在のため地味でキャラ立ちには欠けるが、そこが良いんじゃないと言いたい。私のお気に入りは温厚な主任の神田隆と飄々としたベテラン刑事の花沢徳衛。
多彩なロケーション撮影も本シリーズの特色で、高度成長初期の街の様子を切り取ったショットは魅力に溢れていて、やっぱロケって映画の醍醐味だよなって思わされる。幼い子供たちが道端で遊んでいるカットがよく入るのもリアルな生活感があって、何気ない短いカットに思わず目を凝らしてしまう。
それともう一点特筆したいのが約1時間という尺。話は終始捜査目線で進められ、無駄なサイドストーリーや勿体ぶったカットが無いので、ストーリーがタイトで明快になりドライブが掛かって良い。2本立て上映用のプログラムピクチャーなので短尺が当然とは言え、2時間以上は当たり前という最近の傾向を考えると、このシリーズに見習うべき点はある様な気はするなあ