リコリス

燈火(ネオン)は消えず/消えゆく燈火のリコリスのレビュー・感想・評価

4.8
あの毎日が祝祭の、ヒカリの都市・香港を知っている年代層は、ネオンの映像(しかも日本語・日本企業も多かった…)だけで泣けること必須。
秀逸必買いのパンフによれば、過去の映像、作った・壊す前の実物、CGと色々な形で再現しているそう。

香港に来ると、アジアの最先端にいるかのように思えて、深夜になっても街を歩き回った記憶が蘇る。

居場所のない香港から逃げられない若者レオの成長。こじれた母子関係の回復。香港から移っていく自由な生き方(が出来るのは、それなりの経済的に豊かな知識ある層の特権?)。それから最愛の人、最愛のものを喪失した場合、どうやって立ち上がるか。

名優サイモン・ヤムとシルビア・チャンは本当に素晴らしい。特にレオとシルビア演じるメイヒョンが、レオの祖母の命日に、海辺で「命日おめでとう」と叫ぶ場面の表情の変化とか。シルビアが出ているだけでも見る価値あり。(2022年の台湾金馬奨は、女優賞をこの映画で彼女が、男優賞を「白日青春」のアンソニー・ウォンが受けています)

ネオンの光を失ってしまった香港のこれからも、そこはかとなく暗示的に描かれているような。若者は法をかわして香港の魂のような燈火の伝統を引き継げるのか。ハッピーエンドではないのだ。

監督の話では、ネオン職人たちが声を上げることはなかったのに、映像を見たら語りだしてくれたとか。

素敵な映像をありがとう、と心から言いたい。エンドロールの最後の映像に、涙がこぼれた。

追記 もてなし役が茶碗の白米におかずを次々と乗せてる食事シーン。映画帰りにローストグースがわりのタイ料理ローストチキンを買いました。
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