リコリス

PERFECT DAYSのリコリスのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

涙を流した、デトックスされた、今年の傑作などなど。そうした感想のようには私には響かなかった。

多分、資産家の家で、事情があっての詫び住まい(だからダンボールの中に沢山荷物が)。ミニマリストだが、日々の写真を溜めている(で不出来な写真は切り捨てる)。料理をしないからガス代はそれ程かからず、家賃も安そうだが、缶珈琲、コンビニのサンドランチ、銭湯、日々のお帰り一杯は、かなりの出費。

トイレ掃除をしているのは(リムジン妹の発言意味深)、お前みたいなダメな奴はなんか…してろ、とか言われたからかしら。共用トイレ掃除をしたことのある人ならわかるだろうが、寝る部屋に清掃着(洗濯週1)は気になります。

一番驚いたのは、さゆりママが見知らぬ男と抱き合う姿に、沢山缶ハイボールに煙草。ご都合的に通りかかる、その男の告白に、急にホッとしたような表情。(それで二人、影踏みしても、なんだかなあ。無口な割に、さゆりママには饒舌だったり)。自分のメンタル平らな生活を崩したくないからか。

もちろん、マルバツ手紙ゲーム、何曲か風景と完全に同期する音楽、姪と叫ぶ「今度は今度。今は今。」とか断片的にヴェンダース節には唸ったけれど。

トイレのある場所を通りかかったことも何度かある。ベンチで木々を見上げたり、スカイツリーに挨拶したり、隅田川を渡ったり。
東京が舞台のファンタジーに郷愁を感じる日本の人々は、多分、人工的なTOKYOで日々を過ごしているのでしょうか。若い人たちは、こういう日常をエモいというのかな。

追記︙ 気になって最後の泣き笑い運転を考えてみた。在家での出家者のように欲望を捨て、人間が生きる上で止む無く発生する排泄物の汚れを毎日片付ける、フラットな感情で。なのに煩悩のような人と絡む感情に気持ちは左右されてしまう。

金銭や人間関係に振り回される時間を持たずに済むから、今の好きなルーティンを繰り返す余裕ある生活、フラットな感情を保てる。御曹司世捨て人。

心なき身にもあはれは知られけり
リコリス

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