ペコリンゴ

「ウルトラセブン」55周年記念 4K特別上映のペコリンゴのレビュー・感想・評価

5.0
記録。
55年前、未来があった。

『ウルトラQ』『ウルトラマン』に続く昭和一期ウルトラシリーズ第3作『ウルトラセブン』。初回放映から55周年を迎える同作の4K特別上映。

バラエティ豊かなエピソード群が魅力であった前作『ウルトラマン』とは異なり、地球が数多の侵略宇宙人に狙われているという基本設定のもと、メインとなる敵は怪獣ではなく宇宙人。よりリアルに描写された防衛組織やメカニック含めハードSFな作風のドラマでシリーズ最高傑作の誉れ高い名作です。

今回の特別上映で全49話(うち第12話はとある事情で欠番)の中からチョイスされたエピソードは…

第 7話「宇宙囚人303」
第26話「超兵器R1号」
第37話「盗まれたウルトラ・アイ」
第48話「史上最大の侵略(前編)」
第49話「史上最大の侵略(後編)」

48・49話は最終話なので外せないとしても残りの3枠のチョイスが秀逸。

宇宙人だろうが地球人だろうが正義は一つと諭す第7話、米露冷戦下における核兵器開発合戦を地球対宇宙に置き換えて痛烈に批判した第26話、地球を破壊する使命を帯びた宇宙人に「こんな狂った惑星(地球)など侵略する価値すらない」と言わしめる第37話。

3話中2話が「セブンが戦わない」回ながら、いずれも宇宙人(セブン)である主人公モロボシ・ダンの視点がキーとなるドラマであり、そのメッセージ性の高さには改めて驚かされます。

エレキングやメトロン星人などメジャーな敵キャラクター登場回を外してまでのこのチョイス、恐らく明確な意図を持ってのことでしょう。

個人的にはヒーローの正義を根幹から揺るがす傑作 第42話「ノンマルトの使者」を入れて欲しかった気もしますが、あまりの強烈さ故にノイズとなったでしょうから選外で正解なんでしょうね。

さて、放映から55年経った今、テクノロジーは確実に進化し人々は豊かになりました。

その一方で、55年前の作品が訴えるメッセージがそのまま通用する辺り人類は何も進歩してないように思えるのです。

アホみたいにミサイルを飛ばし、画一された正義など無く、争いによって殺し合う…。

人類が愚かである実態の上で作品のメッセージ性が崇高であり続ける構図はいつになったら崩れ去るのでしょうか。

たかが子供番組と侮ることなかれ。
今この時代に意義深い特別上映だったと思います。素晴らしい。大好き。