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梟ーフクロウーのumisodachiのレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
4.7


韓国で大ヒットした史実を題材にしたサスペンス。

17世紀。盲目の鍼医ギョンスは病気の弟を助けるために宮廷に入る。しばらくすると清で人質になっていた王子が帰国し、ひょんなことからギョンスと交流を持つことに。王子はギョンスの秘密をも見抜いたのだった。しかし、その矢先にギョンスは飛んでもない事件に巻き込まれることになる……。

これは面白い!世の中には文句なしで面白い映画というのが存在するが、本作は紛れもなくそれ。多分、誰が観ても面白いはず。

前半はリュ・ジュンヨルが演じる主人公の境遇や状況がけっこう淡々と描かれていくのだが、宮廷と医師との関わりや、宮廷内の力関係などをくどくない形でしっかりと示していく語り口が見事。けっこう登場人物が多いのに混乱しないように、スッキリと段階を踏んで見せていく巧みさ。もちろん、後半への伏線も多数ここで仕込まれることになる。

中盤はギョンスの秘密が明らかになり、その直後に事件が発生することで一気にストーリーが加速。時間も状況も限られた中で奮闘するギョンスの一挙手一投足から目が離せなくなっていく。

まず、ギョンスを限りなく真っ当な人物として見せていたことが、後半になってモラルの問題が表面化してきたときに活きてくる。ギョンスという正当な軸がブレないからこそ、私利私欲に走った利己的な思考がいかに愚かで無意味なのかということが強調され、単なるエンタメサスペンスではない深みが生まれていた。「何かに気づく」といった、セリフがないシーンの構成も鮮やかで、何度も息を呑むような瞬間を味わうことができた。(「なにゆえ」までのシークエンスが特に見事!!)

また、全体的に暗くて明かりがないシーンが続くので、とても映画館向きな作品でもある。昼間に自宅の画面で観たりしたら、下手したら何もわからない可能性が高い。

現王を演じたユ・ヘジンもかなり美味しい役で好演だったし、王子の子を演じた子役も信じられないくらい上手かった。映画館で上映している間に、ぜひ観て!

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