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⻘いカフタンの仕立て屋のkuuのレビュー・感想・評価

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)
3.5
『青いカフタンの仕立て屋』
原題 Le bleu du caftan
映倫区分 G
製作年 2022年。上映時間 122分。
マリヤム・トゥザニ監督が、モロッコの伝統衣装カフタンドレスの仕立て屋を営む夫婦の愛と決断を描いたヒューマンドラマ。
フランス・モロッコ・ベルギー・デンマーク合作。
『灼熱の魂』のルブナ・アザバルが妻ミナ、『迷子の警察音楽隊』のサーレフ・バクリが夫ハリムを演じた。

海沿いの街サレの路地裏で、母から娘へと受け継がれるカフタンドレスの仕立て屋を営む夫婦ハリムとミナ。
ハリムは伝統を守る仕事を愛しながらも、自分自身は伝統からはじかれた存在であることに苦悩していた。
ミナはそんな夫を理解し支え続けてきたが、病に侵され余命わずかとなってしまう。
そんな彼らの前にユーセフという若い職人が現れ、3人は青いカフタン作りを通じて絆を深めていく。
ミナの死期が迫る中、夫婦はある決断をする。

モロッコやイスラムの文化について知っていれば、今作品を深く理解するのに役立つんやろと思います。
モロッコはイスラム教国の中では最もリベラルな国と聞くが、映画の序盤で夫と妻が通常査察で警察に詰め寄られる場面では、抑圧のイメージがまだ残っている。
警察は二人が結婚しているかどうかを知りたがって、夫がはいと答えると、警察は婚姻届を見せろと詰め寄る。
それが続く。
この子供のいない夫ハリムと妻ミナは、モロッコの上流階級の女性たちのために、高価なハンドメイドの服を作る店を持っている。
男は芸術家で、特に金の細工が得意だ。
(作中、ハリムは傑作であるタイトルの服を作ることになる)。
妻はその社会にしては気が強く、それが警察に止められた理由かもしれない。
その日の夕方、別の催しからの帰り道、彼女は夫にミントティーを飲みにカフェに寄らないかと誘った。
彼は微妙に嫌がりながらもOKする。
一般的に、イスラム圏のカフェは男性専用やったと思う。
モロッコはよりリベラルやけど、女性がカフェに足を踏み入れるのはまだ珍しく、それも夫と一緒のときだけ。
彼女はそこでハリムのパイプを吸う。
警察に止められたのは、カフェからの帰り道。
何か関係があったのだろうか?
わからない。
それが現代モロッコの生活かな。
ハリムはミナにとても甘えているようだが、どこか飄々としている。
医療上の理由から、彼らはお金が必要で、そのために仕事でより多くの商品を生産する必要があり、そのために若い男を見習いとして雇う。
二人の間には、口には出さないが手に取るような愛情が生まれる。妻は若者を脅威と感じ始める。しかし、このようなことは一切語られない。
見た目、態度、身振り手振りですべてが伝わる。(イスラム教では同性愛は犯罪。サウジアラビアでは斬首刑。モロッコではそこまで厳しくないとは思うが、少なくとも懲役刑かな)
ハマム(全裸にならない公衆浴場)で起こるシーンがいくつかあり、ハリムがそこで性的満足を求めることを暗示している。
しかし、ストーリーは夫と妻、そして互いへの大きな愛についてのものですので。

これは繊細で詩的な映画であり、3人の主役はみな巧みでした。
見習いユーセフ役のアイユーブ・ミシウィは、若さゆえの情熱を繊細に表現していたし。
ハリム役のサーレフ・バクリは、縫い物をしながらも、あるいは見習いを賞賛しながらも、完全に男性的な印象を与える能力に目を見張る。
彼の演技は見事なアンダープレーだ。妻ミナ役のルブナ・アザバルは、脚本中最も派手な役どころであり、確実に光ってました。
この3人の演技は素晴らしかった。
しかし、この映画は動きが鈍く忍耐が要求された。
ペースが遅いのか、すべてのシーンが同じリズムなのかはわからない。
本当に大きな瞬間はない。
どの瞬間にも同じ重みが与えられているため、脚本が平坦になりがちなんは否めない。
撮影も個人的にはあまり好みではないかな。
どのシーンも最初はぼやけていて、だんだんシャープな映像にはなっていくが。
照明も暗すぎることが多かった。
このような難点はあるが、今作品を賞賛しますし、アート映画や外国映画が好きな人には嵌まる人は多いと思います。
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