さかしょ

ゴジラ-1.0のさかしょのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.7
脱・特撮化したゴジラの機敏さと凶悪さ。間違いなく過去最高にイカれている怪物である。人を蹂躙しながら銀座を闊歩する様、熱線を浴びせた東京に立ち昇るキノコ雲を目の前にしたゴツゴツとした背中、それら全てが無慈悲で凶暴な史上最悪のゴジラである。
だからとにかく、ゴジラが出る場面は全部胸が躍る。次はどんな殺戮を見せてくれるのか、どんな動きを見せてくれるのか、どんな新しいゴジラを見せてくれるのか、その一瞬一瞬に期待を寄せる。完全VFXともなるとこう描いてくるか、ゴジラ。戦後、街も人も復興間もない日本を、確かにマイナスする、負の魔物である。
人の復興の破壊。それは嘗ての無意味で無慈悲な戦争の傷を癒す、希望の兆しであった。それをマイナスにするということは、つまり戦争の再来を意味する。今回のゴジラはまさに「戦争」である。だがまた改めて戦争というものに駆り出された人々、つまり民間だからこそ、二度と同じ戦いを繰り返してはならないという想いが募る。政府の主導で意味のない方向へと進んでゆく戦争は、もう二度と起こしてはいけない。「未来を生きるための戦争」、その戦争とは決して悲観的なものではない。誰一人死なない、徒に人を死なせない、皆が皆のために、生きていくことを貫くために戦うのである。
とは言えこの映画、褒められるのはゴジラのみであり、ドラマパートはお世辞にも面白いとは言えない。それはそう、山崎貴のドラマだからである。ドラマパートは興ざめとハッキリ言っていい。「こういう王道展開をしてるんだから人物はこう動いて当然でしょ?理解できるよね?」こういうスタンスで堂々と観客を置いていく、実に酷いドラマである。しかしドラマの酷さとゴジラの凄み、これらがうまいこと相殺されて、「ちょっと良い」映画になっているまでである。
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