さかしょ

首のさかしょのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.3
北野武の最新作を映画館で観れるということに、先ず感動。初めて新しい、活きたたけしの「バカヤロウ!」を聴けただけで涙が出る。そして決して多いとは言えないカット数それ故、役者同士のリアルな間をそのまま使う緊張のショット。しかし明らかに「これアドリブだろ!」という「ビートたけし」のユーモア溢れるコメディによる緩和。これぞ新たな時代劇。いや、時代劇のツラを被ったヤクザ武人の殺し方紹介。バイオレンスサムライ喜劇。
明らかな今年No.1!!
《その男、凶暴につき》《3-4x10月》《ソナチネ》、北野武の初期作しか観てこなかった者としては一抹の不安があったが、しかしやはりこの暴力!静かに、そして美しく、平然と行われていく暴力。これだよこれ。その北野武の暴力と、無尽蔵な死に直面する武人の精神との掛け合わせ。《座頭市》以来ではあるも、座頭市とは全く違う狂気の殺し合い。死、死、死、首、首、首......。
その武人の精神とは、忠誠も性愛もへったくれもない、ただの自己中心的な、しかし独特な愛情の凹凸が噛み合う主従関係に他ならない。首を重んじる、即ち武人の道理を重んじる人間ほど野垂れ死に、ロジカルでシステマチックな武家社会に適応する人間ほど生き残る。本当に登場人物全員狂っている。
《七人の侍》を思わせ、そして北野武初期の創作衝動すらも思わせ、しかし作風はとても《アウトレイジ》らしく、だがやはりビートたけしでもある。娯楽的大スペクタクルであるも、どのシーンを切り取っても映画的で、やはり北野武らしく美しい。「自分は今、映画を観ているんだ」と、久しぶりに思えた。
さかしょ

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