恥と外聞

ゴジラ-1.0の恥と外聞のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.5
アタマのてっぺんから爪先まで『シン・ゴジラ』ありきの映画だった。
もうコレは仕方のないことなんだろうと思う。
(じゃあもうやめたら?ゴジラ撮るの)
(とはいえ伝統ある『ゴジラ』の命脈を繋ぐ大義名分を得たのは立派なこと)

今までのゴジラはイチ個人が対抗する存在としてはあまりに大きすぎることを理解し前提としていて、少なくとも個人戦は最後の手段として巧く使いこなされていた気がする。
この点、“個人とその集合体”でゴジラに挑もうとした本作では画期的な挑戦がそこにあったと評せるのかもしれない。
CGも確かに長足の進歩を遂げている。
(でもみんなシン・ゴジラんとき感じたはずの違和感をその場ではあんまり言ってなかったよね…?)

ただゴジラというシリーズはもう背負い切れないほどの業を担わされる日本映画の象徴天皇と化しており、東宝映画のいちキャラクターという枠を大きくはみ出してしまっている。

歴史認識とか対米感情とか、そういうの全部一旦棚上げして反戦反核を訴えるからこそ初代ゴジラは1954年の東京に上陸し、しかも天下国家の暴力装置では太刀打ち出来ない超然たる存在として君臨し得たのに。

なんなんだこの“人類の既存軍事力でもちょっと頑張れば倒せそうなゴジラ”は。
米軍がその気になれば殺せそうなゴジラは。
そうじゃないだろ。
ヲタクが喜びそうなリアリティを出すためにヲタクだけが喜びそうなこじつけ設定をするなよ。
ってか震電みたいな誰でも知ってる安直なネタで現代のキモヲタが満足できると思うなよ。
結局最後は一般ウケのためにお涙頂戴するのによ。
そこでまた分かりやすい伏線にも何にもならないお約束まで入れちゃってさ。

人間以外はほぼほぼ最高でしたよええ。
そりゃそんなの面白いに決まってる。
重巡の主砲でゴジラ撃ったらどうなるかなんてさぁ、ワックワクしちゃうよね〜。
でも人間だけのパートはとにかくダメ。
異常なほどの結論ありきだから爆速テンポで進んでこれっぽっちの想像力をも要求してこない。
退屈だねぇ。
まぁゴジラ映画で人情劇が売りだったことなんてないとは思うけどね。

現代日本最高の女優、安藤サクラさんの持ち腐れ感。
山田裕貴のキモカワいい声大好き。
吉岡秀隆はいつも通りほとんど演技らしい演技をしておらず、むしろそれこそが彼に求められていたバリューなのかも知れないが、一方の佐々木蔵之介は“演技”をしようとしていて、しかもこれがまた、うーんとその、、申し訳ないけど単純に脚本が下手な気がする。
「説明過多」はこの映画について既によく言及されている点だけど、艇長は特に要らないセリフが多すぎる。
そもそも僕はこれ昔から一貫して言ってることなんだけど、彼の演技が苦手で全く肌に合わない。
粗野な言動みたいなものを演じるのが全然マッチしないと思う。

以上、RN続編は特に求めない派さんからのお便りでした。