む

君たちはどう生きるかのむのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.6
何より今も昔も、僕らは宮崎駿の中にある世界(思考)を観させてもらっている立場だ。
天才の中にある泉の水を分け与えられている様で、まずはこうして作品を拝める事に感謝しかない。

今作は半自伝的作品であり、宮崎駿に触れているような感覚があった。
宮崎駿でさえ「わけがわかないところがある」と言っているほど、自らの頭の中で広がる世界を、原液で落とし込んでいるカオスっぷり。


ここまで抽象的で芸術寄りな作品は、たぶん簡単に公開することができない作品だと思う(少なくとも全国の映画館で観れる作品ではない)
これは宮崎駿だから公開できたわけで、これまでヒット作を産める環境としてジブリがあったお陰もあるし、それもこれも元を辿ると、高畑勲、鈴木敏夫と出会ったことから始まるわけで。

まるで絶妙なバランスを保つ積み木のような運命が、こうして今作を公開へと導いてくれたことが泣ける。


今作の僕の感想としては、なにも持ち帰ることができなかった。まるで、物質としての限界や時間に縛られない世界が描かれてあったようにも思える。

最後の素っ気ない終わり方も、僕としては凄く良かったと思っていて、何とも言えない鮮やかさがあり、作品から目が覚めると温かいものが僕の中に残っていた。
む