む

ウエスト・エンド殺人事件のむのレビュー・感想・評価

ウエスト・エンド殺人事件(2022年製作の映画)
3.0
アンチアガサ・クリスティー?

恐らく僕も含め多くの方がミステリーが好きで、手軽なミステリーが欲しくて鑑賞し、結果イマイチだったなで感想は終わっていると思います。
けどこの作品は、実はそんなヤワなものではないのではないかという気もして…

アンチアガサ・クリスティー、アンチミステリーを掲げ、大真面目に犯人探しをしていた鑑賞者への皮肉が込められていたんじゃないか?
ミステリーもあくまで娯楽に過ぎず、犯人探しなんてものは作家の手のひらで転がされるだけだという風な、皮肉で挑発的な作品だったと思います。


最後までレオ監督が描いた“観客へ媚を売るシナリオ”通りだったり、その監督が物語の語り部だったりして、そういった部分から皮肉っぽいなぁと。

少しだけ映る「ねずみとり」の演劇を観て、「臭い芝居だなぁ…外では本当の殺人が行われてるなんて思ってないんだろうなぁ」とか思ったけれど、これって僕ら自身じゃないかと我に帰りました。

映画を観て本気になっているけれど、世の中では今日も誰かが殺されているかもしれない。今作の犯人は、「ねずみとり」の基となった事件の被害者で、ミステリーの軽薄さに怒っていましたね。

当時のイギリス警察は銃を装備していないと脚本にツッコミが入ってましたが、今作のラストでは見事に銃が登場。
あり得ない設定が描かれたことで、この作品自身が創作物であると認識している証拠でしょう(ラストに刑事が第四の壁を越えて話しかけてきている点も)


これは一作を通してミステリーへの皮肉を描きたかったんだろうという考察は、あながち間違いではないかなとも思います。
こんなチープなところにアガサ・クリスティーを引っ張り出してきたのにも納得がいくし、恐らくミステリーの女王っていう称号とかも鼻で笑ってそう。

いやー、深読みしすぎかもしれませんが、これはウケない作品だろう(というか基本低評価でしょう)とわかっていて作った監督は、だいぶ変態ですね。
む