「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。」
臭い、臭すぎる!シュールストレミング!こんなの現実世界だったら、赤面まっしぐらだよ!
だけど、可笑しいと思わせない演技と演出が見事に成されていて、作品の完成度の高さに痺れた。
子供の頃よく観ていて、要所要所で記憶に残っている場面があった。
冒頭のカーチェイスや、大量のパスタ、水路へ流されるルパン、指輪をカチッと合わせるシーン、クラリスとカリオストロ伯爵の顔と声。
あれだけ一生懸命観ていたのに、ストーリーやセリフよりも、子供の僕を惹きつけていたのは、絵や動きといったアニメーションだった。
現実と嘘を行き来するのが宮﨑駿の表現で、例えば、落ちたら死ぬかもしれないというリアリティを感じる一方、空中を平泳ぎして少し進むというアニメーションが共存している。
世界観が破綻しないバランス感覚と、クセになるアニメーション表現は、宮﨑駿作品の中でも、特に今作が中毒性を持っていると思う。
いま改めて観ると、飄々としたルパンだけではなくハードボイルドな姿が描かれていて、ストーリーやキャラクターが事前によく練られていることにも気づく。
だけど、作る上での下準備をひけらかしていないし、宮﨑駿の作品への純粋な姿勢を思わずにはいられない。
あれだけ存在感ある人にも関わらず、作品を鑑賞している間は、作品から宮﨑駿の匂いが消えている。
何に於いても作り手個人の影を感じる物が評価されやすい現代、一線超えてこの域で仕事を出来る人は一握りなんだろうなと、仰いでしまった。