磔刑

マダム・ウェブの磔刑のネタバレレビュー・内容・結末

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)
2.1

このレビューはネタバレを含みます

オススメ度☆

スパイダーマンがヴィランになって襲ってくるコンセプトは面白い。しかしそれが一切活かせてない。
ウェブを使うわけでも無くただのそのそ歩いてくる全身タイツのオッサンぐらいの印象しかない。殺意も対して伝わらないので全く驚異に感じない。
主人公の予知能力と相まって『ファイナルデッド』シリーズを彷彿とさせるが、襲ってくる死の化身であるスパイダーマンの存在が貧弱過ぎて全くハラハラしない。
逃げてる最中に少女たちを森に放置したり、一週間以上ほったらかしにして海外旅行するんだから緊迫感もクソもない。

予知能力も主人公が巧みに利用するのではなく、主人公に都合の良い事象を製作陣が意図的に起こしてるようにしか思えなかった。
主人公はアクションをしないし、ヒーロースーツを着るわけでもない。明らかにヒーロー映画の飛車角落ちの設定で、その分脚本力が試される設定なのだが、全く知性の伴っていないので最低限のヒーロー映画としてのいい部分も無い。これなら大人しくVFX垂れ流してる方がマシである。

そもそもヴィランがヴィランなのかも謎。スパイダーマンの格好で悪事を働いてるわけでもないし、極悪企業を営んでる訳でもない。だからなぜ彼がスパイダーマン三姉妹に命を狙われるかが謎でヒーローとヴィランの対立構造がそもそもフワフワしてる。

三姉妹がスパイダーマンにならず、次回のお楽しみ!!みたいに続くのは流石に呆れた。“チェーホフの銃”ガン無視でそれだけでゴミみたいな脚本である。
ただでさえ盛り上がる場面が少ないのだから土壇場でスパイダーパワーに目覚めて4人で戦うみたいな展開にすればいいじゃない。何のために電車に偶然三人集まったかが意味不明である。スーパーパワーを三人が偶然獲る運命の日なんじゃないのか?

最後に取ってつけたように主人公が失明&車椅子生活なるの何なん?
原作がそうだからってクソみたいな理由付け以外考えられない唐突過ぎる展開で、アメコミ映画がいかにクソかを端的に体現している。
そもそも主人公はアクティブな人間でそこが彼女の良きアイデンティティなのに、なんで最後身障者になるの?しかも全然悲観してないし。予知能力を会得して小娘に囲まれる生活してても視力と歩行能力失うの嫌だろ。

クライマックスの主人公の能力発現もねぇ…。分身とか予知ともはや関係ないし。不条理な二択を都合よく解決できる能力でそれもまたご都合展開に思えた。

鳩を助けるシーンは良かった。彼女のちよっとした行動で他人の命が救えることに気づき、ヒーローとしての自覚が芽生えたことを端的に現してて。でもその後にそれをセリフで設定しててその時点で「あ…これダメな映画だ…」って思った。
ヴィランが女を殺すときも、なぜか女が「毒だわ!」て解説してて呆れた。

あと三人娘が三人である必要性皆無。別に1人でよくない?
クライマックスの不条理な3択のためだけでしかない。この作為が透け透け過ぎるのも萎える点である。

盗んだタクシーを何日間も乗り回してるのは流石に引いた。
細かいツッコミしだしたかキリがない。

アメリカでは批評家、観客両方から酷評されてるが、ゴミってほどではない。でも面白く無いのは間違いない。でもスパイダーマンを悪役にして、それが襲いかかってくるいくつもの修羅場を予知能力によって回避するスリリルあるコンセプト自体は大変良い。しかし問題はそのコンセプトを魅力的な映画として完成させることが出来なかった。製作陣にできる能力が無かった点に尽きる。

僕にもクソ映画を回避できる予知能力ください!!!
磔刑

磔刑