磔刑

プレステージの磔刑のレビュー・感想・評価

プレステージ(2006年製作の映画)
4.5
オススメ度☆☆☆☆
エンタメ作品としては完成度が高いのでオススメです。
ただ『メメント』や『インセプション』ほどではないが、ゴチャゴチャしていて分かりにくい所が散見する。しかし、ラストのカタルシスは多少乱雑な要素を強引に納得させてくれるだけのパワーがあります。
構造的に人間もギミックの一部になってしまっているので感動は薄い。
映画で手品をしているような鑑賞している時間を楽しませることに特化した優れたエンタメ作品。
<以下ネタバレあり>












昔一回観たんですけど冒頭のシーンしか覚えてなかった。超久しぶりの鑑賞だったんですけど全然楽しめました。
エンタメ映画として十分過ぎる完成度。モチーフも独創的。
ただいきなり悪い点で申し訳ないですけど、なぜほぼ筋を覚えてないかも思い出しました。

それはストーリーが複雑過ぎる。
難しいことは無いんですけど、複数の時系列を同時進行するので類似する要素が混線する。
主人公の立場の類似性、復讐と報復の応酬、似たマジック、2人の日記帳。それらの酷似した要素を別のタイムラインで何度も反芻するので何処が重要で何に話が向かっているのかが掴みにくい。
特に日記帳が悪いよ。AがBの日記帳を読むことでBの回想に繋がるのだが、その回想のなかでBがAの日記帳読むからややこしくなる。これをすると誰が主人公か分かりにくくなる。それが今作の一番良く無い点だと思う。
実際日記帳の一番の役割は読まれることを想定して書いてたというビックリ要素なんだから二つも出すもんじゃないよ。
それにテーマも詰め込み過ぎ。不要なまでに煩雑な点も気持ちいい理解に繋がらない点だ。

もう一つは唐突なSF要素。
複製人間を作り出すという突飛の無い話を突然ぶっ込んでくるのはどうなんだ!?と流石に思う。小道具の鳥の顛末が象徴するテーマとしては優秀なのだが、物語に馴染ませ過ぎていて超絶ギミックが目立っていない。逆に目立たせ過ぎてはダメだから地味になって記憶に残らないとも言え、良くも悪くもどっち付かずだ。実際アレが有りならなんでも有りなのも事実。

最後のオチも地味。
オチでビックリさせる系なのは間違いないけど、複製人間もそうだがダブルが私生活も分けていたは流石にパンチが無さすぎる。
確かにドラマ的な感動はある。でもなぜか釈然としないのはどっちが主人公か分かりにくくなっている点だ。自身の人生を文字通り賭けて手品に挑む二人。一人はダブルと私生活を分けて、一人は複製人間を使って。その二人の覚悟をラストで明かしては訳だが物語の尺やドラマも半分ずつにしてるので満足感も半分になってしまっている。その二つを足して一つの満足感になる構造なのは理解できるのだが、ドラマの成熟度が中途半端な気がしてならない。

特にダブル側の嫁と愛人との関係性の違和感や葛藤は描写不足に思う。これは手品のミスディレクションと同じで主人公双方がお互いのタネがバレないようにそれぞれのドラマで観客を煙に巻いている訳だ。その構造は作品のコンセプト的にもオチから目を逸らす目的としても理に適ってるのだが、人間ドラマの満足感としては不満が残る。
二人の人生を賭けて観客を騙している、ある意味全てが舞台で起こった出来事、ショーとして観れば完成度は高い。しかしリアルなドラマかと言われると、そうはならないという評価に至る。
なので、感動とか考えさせられるという訳ではないが、頭スッカラカンにしてその一瞬を楽しむ為だけのマジックショーとして見れば十分過ぎる出来である。

あと細かい点はラストのマイケル・ケインとクリスチャン・ベイルが無言で頷き合うの完全に『ダークナイト・ライジング』と同じラスト。

テスラに会いに行くためにアメリカに行くの謎解き過ぎる。そとそもアメリカが舞台じゃダメなんか?謎装置までイギリスまで運んだんか。そもそもテスラが一番謎人物過ぎるぞ。

スカーレット・ヨハンソン最後どうなったんや?話がゴチャゴチャし過ぎてもう覚えて無いんだが???

テスラがデヴィッド、ボウイみたいだなーって思ってたらマジで本人かよ!!なんだその謎配役。

こうしてノーランのフィルモグラフィ見返して見ると、結構初期の成功作に影響されててシャマランぽいなぁと思った。今の所毎回、ラスト(オチ)の映像から始まって、ミスリードでゴチャゴチャやってる。

高評価の割に文句ばっかりなのはマジでスマン。
でも褒めるポイントはホントに無い。凄いマジックが何故最高かなんて言語化できなくないか?単純に楽しかった、驚いた。それと同じ感覚。
逆にここがダメだねポイントはマジックのタネの部分を指してるのと同じ。マジックのタネは大体つまらないモノだけど、それを凄く魅せる技量が凄い訳。この作品もタネはつまらないし粗いんだけど、それを楽しめるエンタメにしてるのは事実で、その乖離がホントに激しい。

楽しめる反面、また記憶に絶対残らないんだろうな感は否めない手品のように不思議な作品である。
磔刑

磔刑