諸星だりあ

劇場版 SPY×FAMILY CODE: Whiteの諸星だりあのレビュー・感想・評価

劇場版 SPY×FAMILY CODE: White(2023年製作の映画)
4.2
TVアニメは一期だけ完走、の予備知識でトレンドに乗るべく観てみた。

フォージャー一家が、アーニャの調理実習の為に訪れた街で軍の暗躍に巻き込まれる物語。
ロイドとヨルがアウトローゆえにハードな雰囲気も持っているが基本的にはコメディなこの作品、今回も動機はほのぼのしていてそこまで緊迫感は無い。そういう描写もあるものの、雰囲気として命の危機までは感じさせないのは今時と見るべきか、作品固有の持ち味と見るべきか。

劇場版のサブキャラもしっかりキャラが立っているがやはり主役三人の魅力を描くことを最優先しているのが伺え、この映画を初見にTVシリーズや原作に入れるようにしているのは素晴らしいと思った。伏線の張り方と回収はオーソドックスで、目の覚めるようなカタルシスは無いもののしっかりと「危機」が描かれていてスリルはあった。

ロイドは余りにも万能だが、一人でなんでも出来てしまうゆえに妻、娘の特技にも意識がいかず結果的に平穏から遠ざかっていくのが彼の弱点ではなかろうか。
ヨルさんは色恋沙汰に疎く同僚の言葉に振り回されて勝手に落ち込んだりしてしまう。ある意味フィジカルが超人ながら社会性のなさが弱点という、昔ながらのジャンプ漫画主人公なのは彼女だと思う。
そしてアーニャ。
幼いがゆえに好奇心旺盛でトラブルメイカーだが、今回は発端と解決のキー両方の役目を担っていて振り返れば大活躍だった。アーニャが嫌いな人はほぼ居ないと思うので、彼女の存在こそがこの作品の魅力そのものだと感じた。

この一家がそれぞれ持ち味を存分に発揮するアクションムービー。
ご都合が過ぎる展開もあるが、画のテンションとテンポの良さで突っ走れる娯楽作品、何より「強い女性」好きの私にとって今作のヨルさんは眼福以外の何物でもなかった…メチャクチャ格好良い!ヨルさんのバトルシーンで加点している。

一方で現代の家族観が反映された、皮肉の利いた設定という認識もあり両手離しにのめり込める作品ではないのだが、映画館に足を運ぶ甲斐は充分にあったと思う。この作品が今年の締めになるなら悪くない。


「それはなんですか?」
「帰りのチケットです」
諸星だりあ

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