ヨダセアSeaYoda

インフィニティ・プールのヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
-
「クローン技術の発展」を扱って倫理観を問うようなフィクション作品は多数あるが、今作におけるクローンは倫理観崩壊へのトリガーでしかなく、作品の主軸ではない。
面白い設定の上にあぐらをかくことなく、今作独自の描き方を終始追求しながらとことん人間の「格差」や「搾取」「加虐性」「狂気」を描き抜くブランドン・クローネンバーグ監督のまっすぐな姿勢に恐れ入る。

一度ハメを外して味わったらもう戻れない「解放感」と、戻ろうにも鎖で繋がれて足を引っ張られるリアルな泥沼感。これは非行青少年コミュニティや反社会的組織などにもよく見る状態。

そういった“戻れないワルの道”という側面に加えて、今作では明確に「金」の有無がモノを言う。富裕層が貧困層を見下し、玩具扱いし、懐柔して搾取するだけして放り捨てるという胸糞悪い構図が、決して非現実的といえないのがやるせなく、悲しい。

そして何といっても“狂気のファム・ファタール”として登場するミア・ゴスのインパクトは破格。やはり彼女は彼女にしかない存在感・演技を持った貴重な俳優だ…。

---
観た回数:1回
ヨダセアSeaYoda

ヨダセアSeaYoda