彦次郎

ドリアン・グレイ/美しき肖像の彦次郎のレビュー・感想・評価

3.6
友人の画家バジルが上半身裸に紫色のスカーフをかけるという妖しげな肖像画を描いたことから絵だけ年齢を重ねることになる金髪碧眼の美青年ドリアン・グレイを描いたドラマ。原作は19世紀の作家オスカー・ワイルド。舞台が1970年代のロンドンに変更されています。設定は誰しもが思う美貌と若さの保持の願望を元にしたホラーですが愛欲に塗れたエロティックな作品にもみえます。
主役であるドリアン・グレイという人物、女優シビルと恋愛関係に陥るも彼女の演技力が劣化(原因はドリアンとの恋愛)すると見捨てるという元来から非情な性格です。長年の肉欲生活により脳が退化したのか増長したのか、自制心なく殺人をしたり友人に死体の始末を強制したりする辺り、外見は同じでも心が堕落していくことで人間の持つ耽美性を問うた人間ドラマな気もしました。
ナレーションなく時間の経過がされることで画家バジル、ドリアンをそそのかす画廊経営のヘンリー(個人的にはこいつはメフィストフェレス的な存在にみえる)、シビルの兄貴などの加齢からドリアンの若さが逆に異様に映るというが面白かったです。
「若さと美」がテーマでもあるためドリアンを演じるには相当の外見が求められそうですが本作主演のヘルムート・バーガーは超絶イケメンで条件を軽くクリアしています。現実でもバイセクシャル且つ後年アルコールとコカインに溺れることもあるというドリアンと渾然一体となっており適役としか言いようがありません。

余談。原作のオスカー・ワイルドは詩人・作家として19世紀に名を馳せた人でオックスフォード大学主席卒業という超高学歴を持っていますが男色により投獄され人気も失われ失意と貧乏のうちに梅毒で死すという生涯でこの人だからこそドリアン・グレイを描けた(原作は読んでいないけど)のではないでしょうか。
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