おむぼ

アンダーカレントのおむぼのレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
4.0
 愛した人間の蒸発を不意に追ってしまう。不甲斐無い自分のトラウマが心の根底にある。それでも、なんとなく過ぎていく日常こそが結局のところ人生の大半だというナンセンスさを忘れさせないと思える見せ方で良かった。

 前半はよく小ネタ程度のギャグが差し込まれて、コウちゃんをマチゾウと称しておどけてみたり、ピースはきっついタバコと気付いてみたり、探偵は清潔感ある見た目と信じてみたかったり、突き放された気持ちの中で安いミラーボールの光が回る最悪の雰囲気のカラオケで妙に状況とリンクしてる最悪の選曲で熱唱されたりするのが良かった。

 探偵とタバコ屋のじいさん、親しみやすさと年齢ゆえの頼りがいに加えて、妙にええかっこしいな感じもあって良さと嫌さがちょうどいい塩梅だった。まさに「おじさん」だった。
第三者というか、立場上秘密を打ち明けても問題無いうえでしょうもない他人という貴重な存在に何か打ち明けてみるのは心の良い準備運動になると思えるような展開だった。

 世間からはペテン師と呼ばれてしまうだろうがいわゆる自己肯定感が低い男、その言い分の長回しシーンは、目の合わせられなさやどこか要領を得ない、腑に落ちないと思わせるような話し方が見事だった。
自分が情けないとかうだつの上がらないとか漠然とした不安とか、それを他人に伝えられるような体裁の取り繕える言葉として説明しようと出力すると、冗談めかしたようになんとなく…って感じになるのは、なんか吐きそうになるぐらいわかる。
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