おむぼ

あしたの少女のおむぼのレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
3.9
 八方塞がりで救いが無い絶望的な現実をひたすら映している映画だった。
倒叙ミステリーの構成で、主人公2人の社会的な立場は子供と大人でそれぞれ違えども、先人たちが積み重ねてきた競争と同調の圧力が物言う地獄にいるという共通項を見せていた。
そして、悪意があろうがなかろうが論理的思考と謳って他者を迫害しているような、他人の身になって考えることが難しい人でも理解できそうだと思えるぐらい、冷静を装って怒りを込めたように救いが消えていく地獄を遍く見せていた。

 過酷な労働環境と仕事への責任感のもとに元々の知り合いと疎遠になり、自分のいる場所が手の施しようもない地獄であることを知り、感情を表に出さなくなる。
同じようなことを身を以て体験したことがあるからこれがキツかった。
こうなったのは、ネグレクトと呼ばれるほどでは無いが、余計な干渉が少ない分、会話も少ない家庭環境によって積み重ねられてきた元来の性格が影響していることが徐々に浮き彫りになってくるのもキツい。
韓国においてはお上に逆らわないというのは形骸化した儒教の教えによる影響も大きいと推測できるが、日本において考えてみても儒教由来でないだけで変わりないようなアティチュードが根付いているし、今、20〜30代の人たちの親世代による新自由主義にかぶれたものの上手くいかなかった家庭にはよくあることだと思う。
そのため、気軽に誰かに相談できる性格ではないから、平気で従順なふりをして仕事をし続けたせいで、事が起きてから会社のお上なんかにも不可解なように思われているのがまたキツかった。

 2部をもってしても物語としてはもどかしいことが、映画をひどく現実的に見せていた。
でも、1部と2部の画的な共通項、暗い居酒屋内の扉から差し込む西日の光の筋が決まっていた。
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