おむぼ

首のおむぼのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
 のっけから神業を見せていて、蟹数匹出てくる画は、凄惨過ぎてギャグにも見える狂いの世界へと引き込む説得力があった。
あれを最初に見せつけられたら、どんなことが起きても違和感無く思える。
狂いに食傷気味になる副作用もあるのだが、それもお見通しというか、見ているうちに薄々そう感じていくことを言い放つナンセンスな締めが気持ち良く決まっていた。
狂いを見せつけたうえで、細かいことで他人との比較ばかり躍起になって物事を俯瞰できなくなり自滅していくようなしょうもない真理を映すのがブラックコメディたるところだった。あと『たけしの挑戦状』のことも思い出してた。

 笑えるところはグダグダ切腹コントが1番だった。
切腹を見届ける側の「早く死ねよー!」って、ブラウザでYouTube見てる時に動画広告飛ばそうとしてF5キー連打してる時と同じテンションだった。
だから、切腹する側の死の寸前でグダグダになる情けなさも人間らしさで、タイパ主義とか競争社会といったいつ何時でも身近に感じられる窮屈さに対して抗っていたと思う。

 いつ死ぬかわからない世界での男色を描くのは『戦場のメリークリスマス』を思い出す。
演出からは耽美さと汚さの割合が真反対にも見えるけれども、どちらも本質は同じような狂気だったのがおもしろかった。
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