おむぼ

ミレニアム・マンボ 4Kレストア版のおむぼのレビュー・感想・評価

3.6
 大人になれない男女の爛れた日々と、肉体的には何処かに行けるのに精神的には何処にも行けてないようなロードムービーが淡々と描かれていた。
ヴィッキーにとってハオは似た者同士だから気が合うし、自己嫌悪から相手が嫌になるし、自身の一部だから執着もする。
そして寂しい子どもだからパッと見で自分より歳上という意味での大人でしかないやくざ者に惹かれてしまうのは、実際よく見られる薄っぺらさで人間らしかったと思う。

 この映画で多く見られる長回しのクラブのシーンが象徴的で、店内装飾の光源の色の濃さや、コントラストの強さによって顔が暗くてよく見えない感じは、彼ら彼女らの精神的なノーフューチャーさをそのまま示唆しているような、本能的な画のわかりやすさがあった。
(本能的な画といえば、情事の最中にオレンジ色の丸い光が重なって点滅の速度が不定期に変わっているのもそうだったと思う)

 そう思うと、ハオの家がクラブの真似っこだったことは、ヴィッキーにとって家出をする以外救われようがないし、家出をしてホステスとして働く場所も残念なことに同じ雰囲気だったから、雪の中の夕張が2001年のヴィッキー最後の救いだったように見えることが一目でわかるようになっているのが良いところだった。

 また、そもそも独白が10年後のヴィッキーによる第三者じみた語り口だから、彼女が時間の経過で救われているナンセンスな真理もあると思うし、映画の描き方としては淡々としているからそれで良いと思える。
おむぼ

おむぼ