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マエストロ:その音楽と愛とのinotomoのレビュー・感想・評価

4.0
世界的な作曲家で指揮者のレナード・バーンスタイン。彼の輝かしいキャリアは、体調不良の師に代わって、公演で指揮を務めた時から始まった。指揮者として活躍し始めた頃、レナードはピアニストのフェリシアと出会う。2人は惹かれ合い、やがて結婚する。
監督、主演を務めたのはブラッドリー・クーパー。

あまりにも有名で偉大な作曲家のレナード・バーンスタイン。学生時代に吹奏楽部だった私は、彼の作品を何曲か演奏した事がある。彼の曲はもちろん名曲ばかりで、大好きな曲ばかり。その名曲の数々を生み出すその過程や彼の人生を細かく描いているのではなく、この作品はあくまでもレナードとフェリシアの愛の軌跡を描いている。恋の始まりから夫婦になって家庭と名声を手に納めるまでをモノクロで、それ以降をカラーで表現しているのだけど、主演俳優の好演もあり、ラブストーリーというより、愛と絆の物語といった趣になっている。バイセクシュアルであったレナードは、フェリシアを愛していながらも、他の誰かに目移りしてしまうことがあり、夫婦は順風満帆とはいかない。やがてフェリシアは病に倒れ、悲しい結末が訪れる。フェリシアがいなくなったあとの、レナードの抱く喪失感がすごくよく伝わり、作品を見終わった後の余韻として印象に残る。

レナード役は監督も務めたブラッドリー・クーパー。特殊メイクがすごくて、本人そっくり。指揮など大分トレーニングしたのかな。レナードのヘビースモーカーぶりは有名で、作品の中で半分以上はタバコを吸っていたのではないだろうか。
フェリシア役のキャリー・マリガンが素晴らしかった。「17歳の肖像」以来、彼女はいつみても素晴らしい。瑞々しい美しさ、聡明さ、強さをリアリティたっぷりに体現していて、年齢を重ねてからの演技も、病気で苦しんでいる演技も素晴らしかった。

名曲を作る過程の苦労などは描かれてはいないけど、名曲の数々が作品の中で流れるので、さりげなく「ウエスト・サイド物語」の曲が流れたりするあたりはクール。できれば「キャンディード」の序曲を聞きたかった。

ブラッドリー・クーパーは多才だなと改めて感じた。アカデミー賞のメーキャップ賞は、この作品でも良かったかな。
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