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バービーのinotomoのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.9
誰もが知っている、少女達のアイドル、
バービー人形。バービーは、同じ名前の仲間達や、長年の曖昧な恋人ケンと、バービーランドで楽しく暮らしていた。ある日バービーの体に、セルライトが現れたり、常につま先立ちだった足が扁平足になるなどの異変が起こる。原因が人間界にあると知ったバービーは、ケンと共に人間界に行くことにする。

今大活躍中の女性監督、グレタ・ガーウィグが手がけた作品。バービー人形を主人公にしたありふれたガールズムービーかと思いきや、男性社会へのアンチテーゼや、母と娘の関係性における普遍的な問題、個々の人間の存在価値や意義についてなど、多彩なメッセージが込められた意欲作になっている。バービー人形を実写化するのに、これ以上はないビジュアルのマーゴット・ロビーを主演に、ピンクを主体したポップな映像も目に楽しく、「2001年宇宙の旅」を思い起こさせる冒頭のくだりや、「私は美しくない」と泣くバービーに、「マーゴット・ロビーが言っても説得力がない」と突然出てくるナレーション(語りはヘレン・ミレン!)など、粋な演出も多数。「プロミシング・ヤング・ウーマン」を監督したエメラルド・フェネルや、ドラマ「ブリジャートン家」で活躍したニコラ・コクランが出ていたり、女性から支持されるキャスティングもなかなか。

脳みそが空っぽなただの人形だったバービーが、だんだん感情表現が豊かになり、人間らしくなっていくその様子が、説得力があった。マーゴット・ロビーの笑顔も泣き顔もキュートで魅力的。ケン役のライアン・ゴズリングは、歌って踊っての大活躍。その歌もダンスもそうなんだけど、絶妙なダサさが最高。オスカーノミネートはご褒美かな。

ラストシーンのバービーのセリフも含蓄があってニヤリとさせられる。
単なる娯楽作品に仕上げてないあたり、監督の力量を感じる。オスカー作品賞ノミネートに値する良作です。
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