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夜明けのすべてのinotomoのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.7
PMS(月経前症候群)を抱える藤沢は、時々イライラを我慢できず、周囲の人に当たり散らしてしまうことがあった。そんな彼女を職場の同僚達は温かく支えていた。新入社員の山添に、ついイライラをぶつけてしまう藤沢だったが、山添がパニック障害を抱えていることを知る。お互いの抱えている病気の事を知り、二人は次第に距離を縮めていく。
監督は「ケイコ目を澄ませて」の三宅唱。

少しざらついているけど、温かみのある映像が、作品の世界観というか、主人公達を支える周囲の人達の優しさを象徴しているようだった。藤沢と山添が働く栗田科学の人達や、山添の元上司、藤沢の母や友人など、生きづらさを抱える彼らをとりまく人達の優しさが、心に染みる物語だったと思う。また、お互いを苦手と感じていた藤沢と山添が、シンパシーを感じながら距離を縮めていくのだけど、それが恋愛でもなく、友情でもない、絶妙な距離感であり、そのあたりの描き方がとても良かったと思う。
グリーフケアのくだりなど、ドキュメンタリーのような質感で
描かれる場面もいくつかあり印象的。

NHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」のファンにはたまらない、上白石萌音と松村北斗の共演。2人ともナイーブな演技がうまい。大人しいだけじゃなくて、言う時はずばっと言う、ユニークでどこか危うい藤沢を演じた上白石萌音。一見、今どきの若者だけど、思慮深さを感じさせた山添役の松村北斗。二人の抱えている辛さに、手放しですぐに共感できる、とは言えないけど、苦しむ彼らの姿には、胸が締め付けられる。

派手なBGMもなく、
淡々と静かな語り口。
人との繋がりが希薄になってきている
今の時代に、その繋がりの
素敵さを感じさせてくれる作品でした。
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