川辺市子は、一緒に暮らしている恋人の長谷川からプロポーズされる。涙を流して喜ぶ市子だったが、翌日何も言わずに長谷川の前から姿を消す。ほどなくして、刑事の後藤が長谷川の前に姿を現し、川辺市子を探しているという。そして彼女についての秘密を明かされる。
現在と過去が交差し、市子に関わった人達にスポットをあてながら、市子のたどってきた人生を紐解いていく構成。それが自然で違和感なく、そして謎解きの面白さがあり、目が離せない。市子の人生、存在があまりに過酷で哀れで、市子が犯した罪は許されるものではないけど、市子の幸せを願わずにはいられない。無戸籍問題やヤングケアラーなど、社会的問題を扱っていながら、その主張もしつこすぎない印象で好感がもてた。
市子を演じた杉咲花がとにかく素晴らしかった。演じているという感覚がなく、市子そのもので、冷静に考えると、とんでもないキャラクターの市子に、嫌悪感を抱かずに、気持ちを寄せて見ていられたのは、杉咲花の演技のおかげだと思う。魂がふるえるその様を見せてくれたように思う。日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞は、彼女にあげたかった。
あと、私の推しグループのメンバーがドラマで共演した倉悠貴くん(市子の元彼)と中田青渚ちゃん(市子の友人になるキキちゃん)が出ていて、そして良い仕事ぶりで嬉しかった。
彼女の秘密が明かされたあとに映し出される、長谷川との幸せに過ごした日々が切なくて心に沁みた。市子のその後がどうなったのかは謎だけど、ただただ、幸せになって欲しいと願うばかりです。