よしまる

ミスター・グッドバーを探してのよしまるのレビュー・感想・評価

4.6
 何十年も前から観たいと思ってたものが観れて、ささやかな幸せを享受しようと思ったらまさかのエンディングにドーンと気持ちが沈んでしまったww

 リチャードブルックス監督作を観るのは「冷血」に続き2本目。けしてテンポが良いとは言えなくて継ぎはぎ感がすごいのだけれど、ひとつひとつのシークエンスがすごく良くて、それらを楽しんでいるうちに2時間超えもあっという間に観終わった。

 カトリックの家庭に生まれ、聾唖学校の教師をしているテレサを演じているのはダイアンキートン。「アニーホール」と同年の公開で、そっちでオスカーを獲ってはいるものの、複雑な役を熱演したこちらとおそらく合わせ技での受賞ということなのかも。

 聴覚が不自由な子供たちを親身に教え、話したり歌ったりできるまでに心を通わせる有能な教師が、男に溺れ、ドラッグに溺れ、退廃していく。

 敬虔なクリスチャンで厳格な父親、中絶を厭わずフリーセックスさえ受け入れる自由奔放な姉。こうした家庭環境にいると自我を失い道を外れていくのはよくある話。

 明るくまっすぐな性格やチャーミングなルックスのせいで、男運に恵まれなかったり周囲に誤解されたりもあるのだろう。
 けれども同性から見ても異性から見ても、彼女の行いは危なっかしくてヒヤヒヤこそすれ、けして責めたりなじったりできるものではない。
 
 ただ愛情に飢え、普通の暮らしを手に入れたかっただけなのに。無情な世界を描いた映画の中でも超弩級なインパクトを残す傑作だった。なぜこれほどの作品がディスク化されていないのか。

 それにしても普通に明るい部屋で観ていたから良かったものの、このラストシーンは暗闇の映画館で観てたらまあまあ引きずるよね…

  余談ながら、リチャードギアとトムベレンジャーのデビュー作。2人ともめちゃくちゃインパクト大。演技もうまい。この時代から叩き上げでのしあがった役者さんの熱量ほんと好き。