とりん

AIR/エアのとりんのレビュー・感想・評価

AIR/エア(2023年製作の映画)
3.9
2023年48本目

マイケル・ジョーダンをモデルとしたナイキの伝説的バスケットシューズ「エア・ジョーダン」の誕生を描いた物語。
やはりこういう企業ものの作品は観ていて面白い。
基本はやはりサクセスストーリーであるし、本作に至っては挫折やトラブルなどあまり紆余曲折はなく、まっすぐ一本道である。だけどやはり生まれる瞬間は胸が熱くなるものだ。
誰もが知る靴のブランド「エア・ジョーダン」、もちろん私も履いたことはないが知っているし、靴屋さんで憧れを抱くように見たこともある。
そして同じく誰もが知るバスケットボール・プレイヤーであるマイケル・ジョーダンをモデルにしたブランドということも知っていたけれど、そこにこういう物語があったとは。

私が生まれた時には既に「エア・ジョーダン」があったわけで、それを始めナイキがバスケットシューズ界にもトップクラスに名を馳せていた。
だからそれが生まれる前にはナイキはアディダス、コンバースに次ぐ3番手だったということも知らず、今回それを知って驚いた。
現在ではコンバースはナイキに買収されているし。

この話のキーマンはもちろん主役で契約を漕ぎ着けることになるソニーであるけど、注目すべきはやはりマイケルの母であるデロリス・ジョーダンだろう。
息子だからというのもあるけど、あそこまで息子の可能性を確信し、正しい道へと導こうと動く考えは凄いことだと思う。
親が子を信じなければ誰が信じるんだというのももちろんあるが、それでもここまで芯を持ってということはなかなかないだろう。
そして同じくマイケルの可能性を信じたソニーをはじめとするナイキの方々。
まだプロで活躍もしていないこの断面で、彼をモデルとしたシューズを作り、彼の名を世界に刻み、さらにはその収益を分配するという、確信があってもそうできるわけがない前例のないかけに出る姿勢には驚かされる。
もちろんそれが上手くつながったからこそ今があるのだけれど。

劇中で登場する言葉に""靴はただの靴でしかなく、誰かが履くことで意味が生まれる""という言葉がある。
まさにそう、当たり前ではあることだけど、それがどれだけ大きな意味を含むかというのはこの作品を観れば明らかであるだろう。これを体現させるような作品だったと思う。

本作の監督は俳優・監督どちらでも活躍するベン・アフレック、本作でもナイキのCEO役を務めている。彼の監督作品は今作含めて個人的にハマる作品多い。
キャスト陣が豪華でどの方も素晴らしい演技だった。
主役のソニー役のマット・デイモンは驚きの中年体型だったけど、相変わらずの台詞回しとか仕草とか細かいところも含め良かった。
コメディ作品でも活躍するジェイソン・ベイトマンやクリス・タッカーも良い演技してたけど、やはりなんといってもマイケルの母デロリス役であるヴィオラ・デイビスの存在感。
彼女が画面に映ると彼女にしか視線いかなくなるし、表情ひとつでもその演技にも魅了される。子を信じ想う母親役を見事に演じていた。
マイケル・ジョーダン役の子をあえて顔は一切見せなかったし、セリフも「ハロー」のみ。変に役回らせるより、この演出も良かったと思う。
音楽もCindy Roperの「Time After Time」とか当時の流行りの音楽がガンガンかかってて良かった。
とりん

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