とりん

機動戦士ガンダムSEED FREEDOMのとりんのレビュー・感想・評価

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(2024年製作の映画)
3.1
2024年19本目(映画館5本目)

TVアニメシリーズとして2002年から2003年に放送された機動戦士ガンダムSEED、そして2004年から2005年に放送された機動戦士ガンダムSEED DESTINYからなる今でお根強い人気を誇るSEEDシリーズの約20年ぶりとなる続編にあたる映画作品。
当時まだ10代だった自分が初めてガンダムアニメに触れて、そのストーリーの深さと考えさせられる内容に衝撃を受けてファンになった。ガンプラも主題歌CDも集めるほど大好きな作品。
10年以上ぶりに総集編でシリーズに触れて、本作を心待ちにして初日鑑賞。
そんな期待値に反して個人的には素直に良かったと言えなかったかな。

序盤から再び戦火に身を投じつつも、これまでただ巻き込まれたり憎しみで戦っていたTVシリーズの序盤と比べ、争いを抑止しようも戦場に赴く姿にこれまでとは違う趣旨を感じた。そんな展開に心を揺さぶられていたが、ドラマパートから酷さが露呈する。
私がガンダムシリーズに触れたのは数作だけなので大きく語れることはないけど、SEEDシリーズで感じていたのはストーリーの深さとそこで繰り広げられる戦いの理由、戦争の意味を考えさせるところにあると思っている。もちろんその上で展開される恋愛模様や人間ドラマも魅力のひとつではあるけれど、本作はどれもかなり薄いし浅はか。
そもそも1シリーズ50話であれだけのストーリー展開があるのに映画作品1本120分強で語れる内容はたかが知れている。だからそこまで期待はしすぎてはいけないのはわかってはいたけど、無駄なシーンもかなり多い。あんなすれ違いのシーン何度もいらない。しかも間髪入れずに連発で、何を見せられてるのかという呆れさ。

でも目を見張るのはやはり戦闘シーン。あれから映像技術もはるかに向上しているので、あまりにもぬるぬると動きまくるガンダムたち、迫力ある激しいシーンを見せられると思わずのめり込んでしまう。HDリマスターによる美麗さも凄かったが、一から作るとこうもすごいのか。鳥肌ものだし、興奮止まらず、これだけでも観る価値はあった。

でもそんな凄まじい緊迫した戦闘の中でも水を指すようにネタの如く突っ込んで来るので茶番劇でしかない。思わず何度吹き出したことか。
ストーリー全体の大筋も悪くはないと思う。DESTINYラストで語られたディスティニープラン、その先にあったアコードによる人類平等な社会があるというのもわかる。でも時間の短さゆえか深みを感じないし、魅せ方がイマイチ、いや悪い。やりすぎ設定も多い。相手の心を読むという超人的能力だったり、精神を操るなんてそんな領域いったらあかんでしょ。

ストーリーもそうだし、キャラの心理描写なども含めとにかく過剰表現が多い。
愛をテーマにするのはSEEDシリーズのひとつのキーでもあるのでわかるけど、あまりにも押しつけがましい。
そんなに全てが愛、愛、愛で片づけられるならそんな世界にはなってないはずというのは無粋か。まぁだからこそ愛が必要なのだろうけど。

一番はギャグ要素とのバランス。もちろんコミカルな部分を出すのは良いと思うし、重々しすぎるのも辛いし、映画という短い間でのメリハリつけたりテンポ良くするためにもあっていいと思うけど、要素が多すぎる。やはり戦闘シーンでぶっ込みは良くないよ。茶番劇になってしまう。
あまりの見せつけかたに脚本や監督変わったかと思ったけど、そこはTVシリーズと変わらずだった。20年で疲れちゃったかなと思ってしまった。

キラの自分だけで抱え込んでしまうところや戦う意味やラクスに対する想いなどはすごくわかるのだけど、あんなナヨナヨになるなんて。SEED初期かよ。成長したはずが退化しちゃったじゃない。
でもそこを立ち直らせてくれるのがアスラン、さすが。キラとアスランのケンカのシーンは良かったな。アスランが圧倒的すぎたけど。
石田彰さんカッコ良すぎる。むしろTVシリーズの時よりも素晴らしくなってる。
ただアスランの出番は後半までない、ワンカット程度しか出てこないのは寂しい。
しかしズゴックで登場なんて渋すぎる。ズゴックであんな動きできるかよ、敵のエース機と渡り合うなんて有り得ない。止めに相手の心を読んできたところにカガリのハレンチ姿を妄想して思考読み取りキャンセルさせるなんてネタでしかない。

DESTINYでその性格ゆえに常にイライラさせられたシンは本作では少しばかり成長したか。ちゃんと隊長とかさん付け呼んだりしてるし。認めてほしいとぼやく姿は少し可愛くも見える。シンとアスランは良かったなぁ。
カガリが脇役すぎたのは残念だけど、しっかりカガリらしい勇ましさも見れたし、マリューやムウのかっこよさ、加えて味方側の新キャラは良い味出てた。
敵側の新キャラはクセ強くてもうツッコミどころがわからんです。挙げ句敵のボスの声がもう、これもネタでしかない。

SEEDシリーズは主題歌や挿入歌も素晴らしが、本作ももちろん。
オープニングからシリーズに何度も曲提供したTMレボリューションの西川さんが担当して、挿入歌には名曲「ミーティア」も。
そしてエンディングには初代EDをた担当したSee-Sawというこの上ない。

他にも語りたい部分やツッコみたいところは多数あるけど、総じて言えるのは20年の時を経てこの内容を制作する意味はあったのかな。
良い点はあるけれど、手放しで喜べる内容ではないかな。何本かに分けてしっかり魅せる方法もあったのでは。残念感は否めないけど、SEEDのキャラクターやガンダムの戦闘シーンを大きなスクリーンで観れたのは嬉しかったなぁ。
とりん

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