とりん

哀れなるものたちのとりんのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
2024年21本目(映画館6本目)

率直にすごい作品だった。
「女王陛下のお気に入り」、「ロブスター」を手がけたヨルゴス・ランティモス監督の最新作。
監督の作品は「ロブスター」のみ観ていて、その時も世界観の設定に驚かされたが、本作でもかなりだった。
自殺を図った女性を天才外科医のゴッドが"ベラ"として蘇らせて、その経過を見ていく話ではある。この蘇らせる際に脳を入れ替えるのだけど、それ自体はあり得なくもない話だが、大人と赤子の脳とを入れ替えて人生をやり直させるというのはすごい発想だなと。
だからこそ純粋無垢な子どもの中身が大人の身体で成長していくという奇妙な成長劇が観れるわけで、それが故にいろんなことも起こる。
まだ何事も知らない、外の世界も見たことない彼女が常に成長を求め、あらゆることに冒険学んでいくからこそ見えてくる世界もある。
子どもが快楽を知るとずっと求めたくなる、獣のような感性はある種人間は動物であるということも改めて伺えるし、そういった発言もあったりし、「ロブスター」にも通ずるようなところだなと感じた。R-18だからそういうシーンも多々あるけど、個人的には医療系が苦手なので皮膚を切るシーンとかがウッてなってしまう。

こんな難しいタイプの役柄のベラをエマ・ストーンが見事に演じきってるのが凄すぎる。まだまともに歩けない姿含め、反抗期のようないじけた態度、探究心や好奇心に溢れ、いろんなものに手を出してキラキラする様、大人になり冷静に事態を分析して行動していく姿をひとつの作品でやり遂げてるのには感嘆しかない。
彼女を見守るウィレム・デフォーも見事だが、それよりもマーク・ラファロの演技が良かった。
いやらしさ、人としての醜さも満点だし、身体目当てだったのに心も精神も全部ベラにのめり込んでいき、プライド高い男が堕ちていく様をこんな演じれるんだなと。

映像や衣装、装飾とかもかなり惹きつけられるものがあった。時代設定もよくわからないけど、いろんな小物やいろんな衣装を見にまとうベラの姿も印象的。
個人的に記憶に残ったのは背景描写で、美しもありつつ恐ろしさも感じた。それが人の世の禍々しさと残酷さを表しているようだった。
音楽の使い方も絶妙だった。

「ロブスター」は個人的に理解があまりできなかったのもあったけど、本作はかなり読み取りやすかったかも。でも内容含め全体通して今まであまり観たことないタイプの作品だった。最後の終わり方も良かったな。
いろいろととんでもない設定はあるし、こんな魅せ方してくるのかと思わされることも多かったけど、その中でもしっかり発見と気づきをくれて、今の人生や世界を考えさせられる作品でもあった。
とりん

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