マツシマ

ミンナのウタのマツシマのレビュー・感想・評価

ミンナのウタ(2023年製作の映画)
3.6
とあるラジオ放送局の倉庫から見つかった30年前のカセットテープ
そこには「聞いてはいけない歌」が入っていた


EXILEでお馴染み、LDH所属のヴォーカル&ダンスグループ「GENERATIONS」のメンバーが怖い目に遭います

―と聞いた時点で思わず鼻白んでしまう人も恐らく多いのではないでしょうか
ぶっちゃけ「アイドル✕ホラー」系の映画の系譜であるのは間違いないかと思います


しかし!
しかしこの映画をそんじょそこらのその手の低予算ホラーと一緒にすると(アレらはアレらである種の良さがあるとホラー好きの私は思いますが…)
損します!!!
ほんとに!!
良い意味で予想を裏切ってくれます

これは「え~GENERATIONSが主演なんだ~じゃあ観よっかな~メンディ~~~」的なノリで劇場に足を運ぶホラー耐性低めのファンを恐怖のずんどこに叩き落とす、これまた良い意味で非常に凶悪な映画となっております

以下そう思った理由を箇条書きで

●清水崇監督がセルフオマージュ連発で本気で怖がらせにかかってきてる
ぶっちゃけ露骨に「呪怨」ぽい場面もあるのですが、むしろ「呪怨」にはなかった恐怖演出(繰り返しの異常シーン)まで繰り出してきて、かなり力入ってます
ホラー映画として真っ当に怖い
しかも邦画ホラーの平均値を上回って
アイドル的ユニットが主演だからって敬遠したら本当にもったいないレベルになってますこれは

●GENERATIONSの面々がちゃんとキャラが立っている
実在の人物が本人役で登場しっぱなしなワケですが、それぞれ割とちゃんとフィクション的キャラ付けが為されており、映画として違和感がない
特に霊感キャラみたいになってる人が良かったです
本当にあの人霊感あるのでは?
実在の人間にフィクション的キャラクター属性を付与して違和感が発生しないのはすごい
あと皆さん普通に演技が達者です
自分役だからやりやすいのもあるでしょうけど、本当に「ホラー映画のやられ役」として(そこに”いないもの”相手にちゃんとリアクション取ってる)しっかり成り立っています
メンディ氏の「無」の顔、見て下さい


●主役は「GENERATIONS」ではなく、くたびれたオッサン(マキタスポーツ)
アイドル映画かあ?と思って敬遠している皆さん、ご安心下さい
主役はほぼほぼハゲたオッサンです
GENERATIONS目当てに来る客が多いと予想される中でこの人選、最高やろが


●ボスキャラの嬉しい強さ
「リング」で言えば貞子
「呪怨」で言えば伽椰子
ホラー映画には怪異の本体、ボスキャラがつきものです
このボスキャラをどうするか?がオチに向かうための重要なファクターになるわけで、こいつのパンチ力次第でホラー映画の味わいは大きく変わってしまいます
どれだけ途中を盛り上げようと、こいつが弱いと本当に台無しになる
(ビデオ版の「IT」、最近の邦画では「犬鳴村」なんかがボスキャラの弱さで超ゲンナリするタイプの映画)
その点、今作のボスキャラは決して派手で強い怪異ではないのですが、貞子にも伽椰子にも無かった「とある」属性を持っており、これが非常に嫌な感じです
完全空手のホラー映画ではなく、GENERATIONSを起用し、(恐らく)LDHグループ出資のビッグバジェットとしての、言ってしまえば「タイアップの企画モノ」みたいな映画で、こうやって新しいタイプのボスキャラを設定したのは非常に好感がもてるというか、手抜きではない、本気を感じて嬉しいです
こいつはかなり嫌だぜ!!!


と、つらつらと書きましたが
その辺のぬるい邦画ホラー映画を全然軽く飛び越えた出来になっていると個人的には思ったので、アイドルタイアップ映画でしょ?みたいにスルーするのは本当にもったいと思いました
面白いよ!ミンナのウタ!
(タイトルでもまた損してる気がするな)


「リング」から20数年、時代を反映してか「タイムリミット」が1週間から3日に短縮されてるのは面白いと思いました
1週間はもう長いのか…?


「あまりにもタイアップ過ぎる」シーン(GENERATIONSの曲や踊りが出てくる)も、上手いことそれを演出として工夫してるところ、あまりにも特殊な技を使っていて爆笑してしまうので、そこも必見だ